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アーモンドアイは桜花賞で“実は2番人気”だった…ルメールと調教師の言葉で振り返る、「性別を超える名馬」はいかに誕生したのか?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byJIJI PRESS
posted2023/04/09 11:01
2018年の桜花賞を制したアーモンドアイとクリストフ・ルメール
アーモンドアイ調教師が受けた「衝撃」
アーモンドアイが桜花賞を勝った時点で、すでに、管理する国枝栄調教師は、自身が管理した牝馬三冠馬アパパネと比べてどうかという質問に対して「比べるのはまだ早い」といったニュアンスではなく、「母のフサイチパンドラは長いところもこなしているし、気持ちに余裕があるので、(オークスの)距離は問題ないと思う」とコメントしていた。
私がこの馬に関して、初めて一対一で国枝調教師に話を聞いたのは、牝馬三冠を締めくくる秋華賞に向けて調整していたときだった。
国枝調教師は、桜花賞で受けた印象をこう言葉にした。
「衝撃度というか、印象の強烈さでは、私がこの世界に入る前に活躍したテンポイントに通じるものがありましたね」
手前をたびたび替えて走ることに関してはこう話した。
「よその厩舎ですが、2014年の皐月賞馬イスラボニータも、よく手前を替えていました。体はやわらかいのに、体幹はしっかりしていた。見方を変えると、同じ部位に負担がかからず、疲れない走り方なのかもしれない」
牡牝の枠を超えた名馬が誕生するとき
そして、序盤は掛かりながらも完勝したオークスについては、こう言った。
「ディープインパクトの菊花賞を思い出しました。普通、ああなると勝てないのですが、上がりを歩いたわけじゃなく、最後までしっかり伸びてくれましたね」
そう、GIを2勝した時点で、引き合いに出していたのは、すべて牡の名馬だったのだ。当時は、もちろん、その後7つのGIを勝つことなどわからないので、「GIを7勝したウオッカやジェンティルドンナのあとを追う馬になる可能性は充分あると思います」と話していたが、伯楽の感性は、牝牡の枠を超越したスペシャルなものをとらえていたのである。
今年の桜花賞も、2年後、3年後に振り返ったら、「おれたちはすごいものを見ていた」というレースになるか。スタートを楽しみに待ちたい。
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