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「JRA厩務員の年収は800~900万円以上とも…」異例の“ストライキ→強行開催”の裏で何が起きていた? ホースマンが「花形職業」であり続けるために
posted2023/03/25 17:02
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Sankei Shinbun
先週の土曜日、3月18日の中央競馬は、厩務員組合がストライキを決行したのに開催が行われるという、前代未聞の展開となった。
JRAの厩務員、調教助手らが加盟する4労組(関東労、全馬労、関西労、美駒労)と、雇用主である日本調教師会は賃金についての団体交渉に臨み、17日までに全馬労は妥結。しかし、ほかの3労組は合意に至らず、ストに突入した。
これまでは、ストに突入すると競馬の開催は必ず中止になった。代替開催は行われず、重賞だけが順延されてきた。
それなのに、どうして今回は予定どおり競馬を開催することができたのか。
他厩舎の馬を曳く調教師も…何とか開催の“舞台裏”
古くは1976年の皐月賞がストで順延となり、のちに「TTG三強」を形成する関西馬テンポイントが翻弄されて2着に敗れた、というエピソードはつとに知られている。
直近のストによる開催中止は1999年4月3日。その日に予定されていた阪急杯は、翌週行われた。
以来、24年ぶりの開催中止かと危ぶまれていたが、調教師会とJRAは3労組によるスト突入という結果を踏まえたうえで調整を行い、開催を決定。妥結した全馬労の組合員のほか、組合非加入者や、定年や途中で退職した経験者などの補充員らを動員することにした。さらに、調教師がヘルメットを被って自らパドックで馬を曳いたり、他厩舎の馬を曳く調教師も現れたりするなどして、18日の開催が行われた。これは「離れ業」とも「ウルトラC」とも「斜め上の方法」とも言われたが、自身の担当馬が出走するからと、仕事をした3労組の組合員もいたようだ。人繰りがつかず、中山で2頭が出走を取り消したが、大きな混乱もなくレースが行われた。
ストを決行した3労組も、翌19日、日曜日はストを解除することになった。
どのレースも大事だが、特にその週末は、フラワーカップ、若葉ステークス、スプリングステークスなど、馬の将来を左右するクラシックの前哨戦があっただけに、スケジュールどおりに競馬が行われてよかった。