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スカウトがホレる大阪桐蔭・前田悠伍「進化の途中でドラ1級」…センバツのドラフト候補5人をガチ評価「あれだけの強肩はいない」と驚いたのは?
text by
間淳Jun Aida
photograph byNanae Suzuki
posted2023/04/10 11:02
大阪桐蔭の前田悠伍。センバツ連覇こそならなかったものの、その総合力の高さは高く買われているようだ
「素材型」として最も気になった右腕の名前は…
右投手で「最も気になった」と名前を挙げたのは、東海大菅生の日當直喜投手。身長190センチの長身から角度のある直球を投げ込む。スカウトがうなったのはフォークボールだ。
「落差もありますし、打者に近い位置から落ちるので対応するのは難しいです。カウントを取るフォーク、三振を狙うフォーク、バットの芯を外すフォークと投げ分けていたのも印象的でした。真っすぐの球威やコントロールが上がってきたら、ドラフト上位候補になる素材です。大器になる可能性を感じました」
実際に対戦した打者も日當投手のフォークに苦戦していた。大阪桐蔭戦は6回を投げて7つの三振を奪った。2点を失ったものの、フォークは捉えられていなかった。1-0で勝利した3回戦の沖縄尚学戦では完封。主砲の仲田侑仁選手が「今までに見たことない落ち方でした」と驚くフォークだった。
スカウトが「大器になる可能性」と表現するように、日當投手は将来性豊かな投手。一方、完成度の高い前田投手に対し、日當投手は素材型といえる。現時点の課題は少なくない。
「カーブやスライダーを投げる時に腕が緩んだり、下がったりします。腕の振りで打者に球種を読まれてしまうことを嫌って修正しようとすると、思うように変化しなかったり、投球フォーム自体に影響が出たりする可能性があります。体が大きい選手は細かい動きを苦手にする傾向にありますが、フィールディングやクイックも克服が必要な課題です」
ただ、スカウトは課題の修正より、直球を磨くことを重視してほしいと力を込める。投球の基本は直球と指摘し「フィールディングは先のステージで改善する時間があります。高校生までの世代は、長所をできる限り伸ばす考えの方が選手としての可能性が広がります」と話した。
注目の広陵・真鍋の“ある打球”に注目
打者も左打者と右打者1人ずつ、今大会で評価を上げたドラフト候補を挙げた。1人目は広陵の真鍋慧選手。4試合で14打数6安打、打率.429と結果を残した。ホームランはなかったものの、ツーベースを3本記録。身長189センチ、体重90キロの恵まれた体格を生かした長打力を最大の特徴としており、今回のセンバツではセンターから逆方向への打球に成長が詰まっていたという。
「1年前と比べて、より捕手に近いポイントで投球を捉えていました。ヤクルトの村上(宗隆)選手もそうですが、打率も残せる長距離打者はポイントを近くしています。変化球の見極めや動く球への対応力を上げる目的がありますが、より長く球を見るためにはスイングスピードが求められます」
特に評価したのが、専大松戸戦で放ったツーベースである。