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スカウトがホレる大阪桐蔭・前田悠伍「進化の途中でドラ1級」…センバツのドラフト候補5人をガチ評価「あれだけの強肩はいない」と驚いたのは?
posted2023/04/10 11:02
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Nanae Suzuki
第95回選抜高校野球は、山梨学院の県勢初優勝で幕を閉じた。声出し応援の解禁や延長10回からのタイブレーク導入など、例年とは違った話題もあった中、プロ野球スカウトの仕事は不変だった。選手の発掘と評価。実際に甲子園を訪れたスカウトの1人は、今大会で目を引いた今秋のドラフト候補に5人の名前を挙げた。
大阪桐蔭・前田を「世代No.1左腕」とほれ込む
まずは、「変わらずドラフト1位候補」と評したのは大阪桐蔭の前田悠伍投手。今大会は全4試合に登板して、21回2/3で4失点(自責3)。与えた四球は2つだけで、28奪三振を記録している。準決勝の報徳学園戦は2番手でマウンドに立ち、2点を失って敗れたが、初戦の敦賀気比戦と準々決勝の東海大菅生戦は1失点で9回を投げ切っている。スカウトは「世代ナンバーワン左腕」とほれ込む。
「真っ直ぐの質とコントロール、変化球の精度。さらに、牽制やフィールディングと高校生とは思えない完成度の高さです。2年生だった昨年からドラフト1位候補と評価していますが、今春のセンバツでの投球を見ても変わりません」
スカウトが評価するのは完成度の高さに加えて、現状に満足しない向上心や探究心といった野球に取り組む姿勢にもある。今回のセンバツでも、前田投手の成長を感じたという。
「力いっぱい投げれば、もっと球速が出ると思います。ただ、前田投手はリリースの瞬間に最大限のパワーを生み出すために、いかに脱力するかを追い求めているように見えました。変化球では今までのスライダーとチェンジアップに加えて、カーブも効果的に使っていました。新しい変化球、特に球速の遅い変化球を取り入れると他の球種に影響することを嫌がる投手は少なくありませんが、前田投手は高いステージに理想を置いていると感じました」
球速が落ちていても「進化の途中」と表現するワケ
昨年出場した春と夏の甲子園と比べると、前田投手の直球は球速が落ちている。だが、決して退化しているわけではなく、スカウトは「進化の途中」と表現する。
2年生だった昨年は、1学年先輩に別所孝亮投手、川原嗣貴投手と最速150キロを誇る2人の投手がいたこともあり、前田投手は甲子園のマウンドに立たない試合もあった。最高学年となった今年は絶対的なエースであり、しかも主将を務める。スカウトは「チームを勝利に導くため、前田投手は連投やピンチの場面での登板が昨年以上に増えると予想されます。その中で、無駄な力を省いた投球フォームのような高いパフォーマンスを発揮する方法を模索しているのだと思います」と語った。