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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「飯倉チャレンジ」は知っていても、飯倉大樹は知らない? 無謀と批判されても、GK飯倉はなぜ”攻撃参加”し続けるのか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/04/08 11:05
3年半ぶりに古巣の横浜F・マリノスに復帰したGK飯倉大樹(36歳)。自らのプレースタイルの代名詞にもなっている”飯倉チャレンジ”について語った
GKなのに、ドリブルで3人をかわして…
自陣のペナルティーエリア内、足もとのテクニックで相手との1対1勝負に応じれば、ドリブルで果敢に持ち上がっていくこともしばしば。
11月2日のホーム、ベガルタ仙台戦ではバックパスを受けてドリブルで3人をかわしていくなかで相手のスライディングタックルによって奪われてロングシュートを打たれるというシーンがあった。主審に相手のファウルをアピールしたところ、アンドレス・イニエスタに早く戻れとばかりに腕を押されたことで「怒らせた」と見る向きもあった。
真実はどうだったのか。
「いやあのときはアンドレスから怒られてもないし、別に何か言われたわけでもない。ずっと後のことですけど、チームが勝てない時期に自分のミスで負けた試合があって、みんなに『きょうは俺のミスで負けた、申し訳ない。みんなのプレーは決してネガティブじゃないから』って謝ったことがありました。でもアンドレスは『この負けはチームとしての問題だから、お前ひとりで背負いこまなくていい』と言ってくれて。スタイルをずっと曲げないままやれることができたのも、チームメイトのおかげなんです」
嘲笑の対象やSNSでの誹謗中傷も
F・マリノスが2019年シーズンに優勝を飾ったことも大きかった。既に離れてしまってはいたものの、自分のやってきたことが間違いではなかったのだと実証されたと思えた。変革の一端を担えたという確信によってヴィッセルでも自分のスタイルを貫いていく、その後押しとなった。
こう記すと飯倉の強いメンタリティが浮かび上がるものの、実際はそんな簡単なものではなかった。ハイリスクゆえに大きなミスにつながれば「飯倉チャレンジ」は嘲笑の対象にもなる。SNSでは「誹謗中傷がとんでもないことになる」。ミスをすれば、また叩かれるのかよ、と愕然とした。
行くべきか、行かざるべきか。葛藤がなかったことなどない。
「ロングシュートを打たれるんじゃないかって常にビクビクしています。これはヤバいだろ、いや行けよって自分のなかに2つの声があって、やっぱり行くぞって毎回こんな感じなんです」
なぜ葛藤があっても、前に出ていくことができるのか。それは冒頭に出てくる子どもの話にもつながっていく。