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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「飯倉チャレンジ」は知っていても、飯倉大樹は知らない? 無謀と批判されても、GK飯倉はなぜ”攻撃参加”し続けるのか?
posted2023/04/08 11:05
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
”飯倉チャレンジ”とは…
「飯倉チャレンジっていう言葉を知っていても、飯倉大樹っていう俺のことを知らない子どもがいたんですよ。信じられます?」
なるほどプロレス技のシュミット式バックブリーカーを知っていても、“地獄の料理人”ハンス・シュミットを知らないってことか。んっ、飯倉さん、プロレスはあまり興味ない? サッカーに例えればマシューズフェイントを知っていても、今の子どもたちはイングランドのスタンリー・マシューズを知らないってこと、野球に例えればナックルボールを知っていても、今の子どもたちは“ナックルズ”と呼ばれたMLBのエディ・シーコットを知らないってこと。でも当時ならその言葉と人物は一致していたはず。「飯倉チャレンジ」だけが一人歩き気味なのは、確かにレア中のレアかもしれない。
飯倉チャレンジ――。
はっきり定義があるわけではないが、ネットで騒がれ始めたのは現在セルティックの監督を務めるアンジェ・ポステコグルーが横浜F・マリノスにやってきた2018年シーズンだった。超ハイラインの攻撃サッカーを展開するチームの象徴的な存在として広大なエリアを守る一方、攻撃にも加わる守護神の飯倉大樹はハーフウェーラインまでポジションを上げてプレーすることもあった。マヌエル・ノイアーをもしのぐ7kmの走行距離。ハラハラドキドキのスペクタクルかつデンジャラスは表裏一体である。
ポジションを高く取るためにゴールはガラ空き。ひとたび相手にボールを奪われたら、無人のゴールに向かってロングシュートを打たれてしまう。相手方のそのアクションがいつしか「飯倉チャレンジ」として広まるようになる。
「無謀」との声にも、なぜチャレンジを止めなかったのか?
リスクが目立ち、チームの成績も低迷すると無謀だという声も次第に高まった。それでも彼は止めようとしなかった。
飯倉が振り返る。