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りくりゅう「合わせるんじゃなくて、合うんだ」悩んでいた木原龍一と三浦璃来が“初めて出会った日”…本人が語る「言葉では言い表せない相性」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/04/04 11:02
世界選手権で優勝を果たし、笑顔で見つめ合った三浦璃来と木原龍一
りくりゅうが語る、「言葉では言い表せない」相性の良さ
ペアとしての歩みをスタートした2人の決意が間違っていなかったことは、次の言葉が示している。
「言葉では言い表せない相性というのがペアにはあるんだなと思います」(木原)
「ペアはどちらかが合わせるイメージでしたけど、滑ってみてお互いが合いました」(三浦)
「相性」の意味も幅広い。ペアのさまざまな技を行うにあたって、例えば体格のバランスであったり、腕の長さ、手のひらの感覚であったり、さまざまな要素がそこに含まれる。例えばデススパイラルという技がある。男性と女性が互いに手をつかんで、男性を軸に女性を回す技だが、そのときの腕の長さなども相性にかかわると選手から聞いたことがある。
また、世界でも屈指のスピード感あふれる演技を可能にしているスケーティングもまた、相性の1つだろう。
落ち込む三浦を、木原は外に連れ出して…
加えて、人としての相性もかかわってくる。
例えば、2019年11月のNHK杯。目標の得点を大きく上回り、5位という(当時としては)好成績をあげた大会だ。
実はフリー当日の公式練習でうまく行かず三浦が落ち込んでいた。それを見ていた木原は朝食に誘い、「スケートに関係ない、どうでもいい話をしました」(木原)。
「実は心が折れそうでした」という三浦は、その時間を経て「落ち着きました」。木原が三浦の様子をよく見ていて、今、何が必要なのかに気づくことができたからこそであった。
2020-2021シーズンはコロナの大きな影響を受けた。カナダを拠点とする2人は氷上で練習できない時間が続き、帰国もままならない。ふさぎこむ三浦を、木原はときに外に連れ出すなどして2人で乗り越えた。
同シーズンの世界選手権では、日本人同士のペアとして史上最高の10位となり、翌年の北京五輪の日本の出場枠を確保。世界で戦っていける実感を得た。