オリンピックへの道BACK NUMBER
りくりゅう「合わせるんじゃなくて、合うんだ」悩んでいた木原龍一と三浦璃来が“初めて出会った日”…本人が語る「言葉では言い表せない相性」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/04/04 11:02
世界選手権で優勝を果たし、笑顔で見つめ合った三浦璃来と木原龍一
ケガで再確認した「二人で滑ることの大切さ」
そして2022年の北京五輪ではその存在を大きく知らしめることになった。
団体戦ではショートプログラムで4位、上位チームだけが進出したフリーでは2位。日本の初めての団体戦メダル獲得に大きな役割を果たしたのである。
それまで、男女シングルに比べ、ペアは団体戦の弱点とされてきた。ソチ五輪ではショートが8位、フリー5位。平昌五輪でも8位と5位。順位に対して与えられるポイントは、両大会ともに計9点にとどまった。北京で得たのは16点。2種目を残した時点で日本のメダルを確定させた。
個人戦でも7位となり日本史上初の入賞を果たし、翌月の世界選手権では銀メダルを獲得した。
迎えた今シーズンを前に、厳しい状況もあった。三浦は7月のアイスショーで転倒し左肩を脱臼、治療などに専念したことで練習の再開は9月半ばまで待たなければならなかった。それもまた、ある意味、好材料としてみせた。
昨年11月のNHK杯で木原はこう語っている。
「今シーズンは開幕前に怪我をして、2人で滑ることが当たり前ではないことに気づきました」
2人であることが当然ではないことをあらためて知り、ともに競技に取り組むことがどれだけ大切なことなのかを再確認する契機となった。
三浦「合わせているんじゃなくて、合うんだよね」
今シーズンのショートプログラムは『You’ll Never Walk Alone』。そのテーマは「『人間は一人では歩いていけない』ということ」だと説明している。それも象徴的だ。
2人の根幹をなすのは、2021年に抱負として語った「前回の自分に勝つこと」、今シーズンにブルーノ・マルコットコーチからおくられた「誰かに勝とうというのではなく、過去の自分たちに、0.1点でもいいから勝っていこう」という言葉。わずかであっても進化し続けることを心がける姿勢だ。
小さな一歩を無数に重ねつつ、貫いてきたからこその、今シーズンのグランプリファイナル初優勝であり、世界選手権初優勝であった。
「合わせているんじゃなくて、合うんだよね。だから言いたいことも言い合えるし、ぶつかっても、いっしょに改善できる」(三浦)
天の配剤とも言うべき2人は、何事にも甘んじることなく、スケートに対して、互いに対して真摯に向き合い、尊重しながら打ち込んできた。
進む先にどのような光景が形作られるのか。未来は大きく広がっている。
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