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[キャッチャーたちの戦い]勝利を繋いだ三位一体
posted2023/03/30 09:02
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Yukihito Taguchi
大谷翔平が先発する中国との初戦、バッテリーを組むのが甲斐拓也に決まったのは宮崎キャンプの半ばを過ぎた頃だった。
宮崎キャンプの初日から参加しているダルビッシュ有は韓国戦での先発が決まっていた。甲斐と中村悠平、大城卓三の3人をどう起用するか……キャッチャーのことを栗山英樹監督から任されていたバッテリーコーチの村田善則は、いろんなパターンを考えていた。
「本当なら1人でマスクをかぶるのが理想的だと思います。でも今回は普段のボールの軌道も配球のパターンもわからないメジャーのピッチャーが2人来ることになっていた。彼らと短期間でコミュニケーションをとって理解を深めるのは大変なことだと思いました。だったら拓也と悠平でダルと翔平を分担してもらおうと思ったんです」
甲斐のことを村田は「初めて受けるピッチャーのデータを上手く拾って引き出せるキャッチャー」だと評価していた。一方で中村のことは「時間をかけて段階的にピッチャーを作り上げていくのがうまいキャッチャー」だと見ていた。だから合流が早かったダルビッシュを中村と、合流が遅い大谷を甲斐と組ませることにしたのだ。
さらに大谷とダルビッシュを甲斐と中村で分担することで、1次ラウンドの相手国も分担できる。宮崎キャンプのときに始まった相手国ごとのミーティングもひとりが4カ国すべてを分析するのではなく、2カ国ずつを重点的に見ることで負担を減らせる。もちろん試合の後半からの出場に備えてすべての国のデータを頭に入れておく必要はあるが、少なくとも先発ピッチャーとはそれぞれが、より中味の濃いミーティングができる。ならばと村田は腹を括った。