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[アメリカ戦プロフェッショナル分析]決勝vs.アメリカ 3-2 松中信彦「明暗を分けたつなぎの意識」
posted2023/03/30 09:04
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Naoya Sanuki
日本の勝因の一つ目は、先制された直後に村上の本塁打で同点に追いついたこと。あそこで得点が入らなければそのままズルズルと行きかねなかったので、流れをすぐに取り戻せたのは大きかったですね。
もう一つは、日本の投手陣が危ない場面をつくりながらも最小限の失点で切り抜けたことです。国際大会の決勝ともなれば、相手投手のレベルが高く、大量得点は難しいので、どうしても僅差の勝負になります。日本の投手陣がいかに踏ん張れるかがカギになると思っていました。
メジャーの強打者が並ぶアメリカ打線に対して、栗山監督が選択したのは細かい継投策。1~2イニングで交代させ、打者の目を慣れさせない。そうでもしないと抑えるのは難しいと考えたのでしょう。戸郷や高橋といった若い投手たちが、監督の起用によく応えたと思います。
アメリカ打線は、後ろの打者につなぐ意識が希薄だったように感じました。自分が打ちたいという気持ちが強く出ていた。象徴的だったのが9回表の攻撃です。
1点を追う状況で先頭のマクニールが四球を選んだものの、次のベッツが2球目を打って併殺。意図が感じられない打撃で、せっかくのチャンスを潰してしまいました。
2死走者なしで打席が回ってきたトラウトは打ちにくかったでしょうね。流れが悪すぎますから。しかも投手は大谷。僕の感覚でいえば、あの場面では99%打てません。それぐらいノーチャンスです。
実際、真ん中のストレートを2回、空振りして追い込まれました。惜しい感じではなくて、完全な力負け。トラウトも「これはヤバいな」と焦りを感じていたはずです。そうなると始動を早めざるを得ないので、最後の変化球も振りにいってしまう。スライダーは頭にあったと思いますが、最高のボールでしたし、あれだけ曲がったら打つのは難しいですよね。