ぶら野球BACK NUMBER
「WBC決勝、じつは“巨人組の逆襲”だった」あの岡本和真が吠え、大勢は最多登板、戸郷翔征は第二先発…Bクラス・原巨人の再建はここから始まる
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/25 17:00
アメリカとの決勝戦、4回にチーム3点目となる2号ソロホームラン。大声を出し、笑顔を見せた岡本和真
戸郷翔征は第二先発で“アメリカ打線を沈黙させた”
そして、昨季は自身初の二ケタ勝利に154奪三振で最多奪三振のタイトルを獲得した22歳の戸郷翔征も、初戦の中国戦で大谷のあとの二番手として3回を1失点。決勝戦でも3回から二番手でマウンドへ上がると主軸のトラウトとターナーから三振を奪い、2回を無安打2四球で無失点に抑え米国打線を沈黙させた。今大会は初戦と決勝の第二先発として、防御率1.80と普段とは違うタフな役割にも見事に対応してみせた。
ちなみに毎年発行される球団監修の巨人イヤーブック表紙は20年と22年が坂本勇人、21年は菅野智之と投打の二枚看板が飾るのが定番だったが、先日発売された23年版は岡本と戸郷という新主将と新投手キャプテンがふたりで表紙に並んでいる。
思えば、前回大会の17年WBCの準決勝アメリカ戦で先発マウンドに上がったのは当時27歳の菅野で、バッテリーを組んだのは同い年の小林誠司。「6番遊撃」でスタメン出場したのは28歳の坂本である。奇しくも、6年ぶりのWBCで巨人主力の世代交代も実感する形となった。
原巨人の再建は“WBC組の逆襲”から始まる?
岡本、戸郷、大勢、大城と全員90年代以降生まれだが、彼らはアマ時代も、松井秀喜や高橋由伸のように誰もが知っている甲子園や六大学のスター選手ではなかった。一昔前の球界とは異なり、今は日本シリーズの数倍の注目度と視聴率を誇るWBCが全国区デビューのきっかけになるケースも多いだろう。同時に子どもたちの野球人口の減少が指摘される昨今、そこは世の中に対して野球や球団の魅力をプレゼンする貴重な場所として定着しつつある。
今回の史上最強とも称される代表チームの象徴は二刀流の伝説を作ったMVPの大谷翔平であり、投手陣をまとめた最年長のダルビッシュ有であり、新しい風を吹かせた“たっちゃん”ことヌートバーらメジャー組だった。その一方で、NPB組も求められる自分の仕事をしっかりとやり遂げ、ひとつの戦うチームとして機能した。そして、大会前の注目度こそ決して高くなかったものの、ポスト地上波時代を生きる巨人の選手達もそれぞれ爪痕を残したのだ。
一昔前より知名度は劣っても、今の巨人も、決してあの頃の巨人に負けていない。見たか広岡達朗よ……じゃなくて、岡本のスケール感は右打者としては球団屈指のレベルで、大勢のポテンシャルは巨人のクローザー史上最高クラスだろう。その片鱗を広くアピールできただけでも、WBCでの活躍には大きな意味があった。
ここがストーリーの終わりではなく、きっかけであり、始まりだ。日本列島が熱狂した祭りが大団円で幕を閉じ、東京ドームにペナントレースという日常が戻ってくる。昨季4位と5年ぶりのBクラスに終わった原巨人の再建は、WBC組の逆襲から始まるのだろうか――。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。