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村上宗隆23歳は“世界のオオタニ”をどう見たか? 言葉を失ったレベル差に…“複雑な表情”を現地記者は見た「若手で唯一、憧れを捨てていた」
posted2023/03/25 11:03
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Naoya Sanuki
「ショウヘイ!!」
歓喜の地となったマイアミのローンデポ・パーク。そのロッカールームで行われたシャンパンファイトの生中継で、嬉しそうにその名を叫ぶ村上宗隆の笑顔があった。美酒を浴びせかけた相手は、世界一の立役者・大谷翔平。5歳年上のスーパースターも、その瞬間は最高の盟友であり戦友でもあるチームメートの「翔平」だった。
大谷の衝撃…揺らいだプライド
なんとも言えないあの表情が忘れられない。それは3月3日に侍ジャパンに大谷が合流して見せたバッティング練習でのこと。名古屋(バンテリンドーム)での練習、大阪での初実戦(京セラドーム)と、フリーバッティングで桁違いの打撃を見せる大谷の姿に、村上はただただ言葉を失っていた。
「打球の上がりだったり飛び方、全てにおいて(自分とは)違うなと感じました」
その言葉は、どこか砂を噛むような苦い思いも含んでいた。呆気にとられたり、憧れに瞳を輝かせる他の選手たちとは違う、「悔しい」という思い。明らかなレベルの差を見せつけられた大谷のバッティングの前に、令和の三冠王のプライドが揺らいでいた。
悔しさに引き摺られるように、WBC1次ラウンドでは不振に陥った。初戦の中国戦から4試合で14打数2安打7三振。1番のラーズ・ヌートバーから、近藤健介、大谷と続く上位打線の好調が、4番・村上の不調を一層浮き上がらせていた。第3戦のチェコ戦では、4打席目まで無安打に見逃し三振2つと全く気配がなかったが、第5打席にようやくライト前に運びこれが大会初ヒット。試合後、思わず本音が漏れた。
「(周りから気を遣われて)すごく嫌でしたね。チームでもそういうことは味わうことがないですし……。逆に打てよ、とかそういう言葉をかけられた方が僕自身、楽になる部分もあったと思うんですけど」
ヒットが出ない間もチームメートからは温かい言葉をかけられていた。最も気にかけていたのは大谷だろう。韓国との第2戦では、5回無死二塁の場面でセカンドゴロを放ったがランナーを進め、6回にはレフトへ犠牲フライ。その度にベンチで大谷は「ナイス!」「そういうのが大事だよ」と励ましていた。