スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「WBC、アメリカでも視聴者数69%アップだった」米国メディアは“ニッポン優勝”をどう報じた?「オオタニもトラウトもいるのに…なぜ弱い?」エンゼルス記者は嘆く
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/24 17:16
14年ぶり3度目の世界一を決め、喜ぶヌートバーと大谷翔平。ヌートバーは「彼との関係はずっと素晴らしかった。最高の友達」と振り返った
「世界中の耳目が大谷に集まっていたんだよ。予め、筋書きが書かれていたかのようだね。いま、アメリカチームのクラブハウスにいる選手のうち9割は、大谷と同じことをリトルリーグや、学生時代の大会では達成していたはずなんだ。それをどうだろう、大谷はビッグなステージでやってるんだよ」
そしてデローサ監督のコメントはこう結ばれている。
He is a unicorn to the sport.
ユニコーンとは一角獣のことだが、英語では大成功を収めた新興企業を表現することが多い。本当に希少価値のある存在だ、という意味である。
大谷は、WBCという大会をRealにしただけでなく、自身の名声、評価も次のステージへと上げたようである。
じつはアメリカでも「視聴者数69%アップ」
続いては、アメリカのメディアにおいてWBC決勝のインパクトはどうだったのかをThe Athleticから調べてみよう。
日本では決勝戦の平均視聴率は、関東地区で世帯視聴率42.4%(個人視聴率24.3%)。
瞬間最高視聴率は、大谷が最後の打者となったトラウトから空振り三振を奪った瞬間の午前11時43分で、世帯46.0%(個人26.3%)だった。さて、アメリカはどうだったか。
【The Athletic】
・平均450万人の視聴
・2017年のWBC決勝(アメリカ対プエルトリコ)よりも視聴者数は69パーセント上昇
・FOXスポーツとFOX Deportes(スペイン語チャンネル)は、午前11時30分から午前11時45分(日本時間)の時間帯に650万人の視聴者を獲得
The Athleticの記者は、「スクリーンライターでも書けないようなエンディングが待っていた。これまで、ビデオゲームのファンタジー対決でしか実現しなかった大谷翔平対マイク・トラウトの対戦である」とまとめ、9回表に視聴者数がピークに達したことを書いている。
経済的にも大成功。MLB、そして中継局のFOXにとっても、まさに「神様、仏様、大谷様」だったんじゃないでしょうか。
「オオタニもトラウトもいるのに…なぜ弱い?」
そして最後は、大谷とトラウトが所属するエンゼルスの地元、オレンジ・カウンティ・レジスターの記事を紹介する。
【オレンジ・カウンティ・レジスター トム・ムーア記者】
“The Ohtani-Trout show must go on”という見出しがつけられていて、盛り上がったWBCの熱をエンゼルスにも――という願いが込められた記事になっているが、嘆き節がすごい。