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「大谷翔平はそういう星の下に…」谷繁元信がWBC決勝を徹底解説“なぜ日本はアメリカに勝てたのか”「大きなポイントは序盤にあった」
text by
谷繁元信Motonobu Tanishige
photograph byGetty Images
posted2023/03/23 17:45
アメリカ戦の9回、マイク・トラウトから空振り三振を奪い、歓喜の雄叫びをあげる大谷翔平。侍ジャパンの旅は最高のフィナーレを迎えた
日本だけでなくメキシコ側から見ても素晴らしいプレーがたくさんありましたし、さまざまな感情や思惑が1試合のなかで交錯していた好ゲームでした。敗れたギル監督が「野球界の勝利だ」とコメントしたのも頷けます。最後まで何が起きるかわからない。「野球ってなんて面白いスポーツなんだ」と、あらためて思い出させてもらいました。
「勝敗を分けたポイントは序盤にあった」
準決勝が会心の試合だったので、決勝は晴れやかな気持ちで見守ることができましたね(笑)。ただただシンプルに楽しみというか、「この最高の舞台でアメリカに勝ってくれ。日本の野球を世界に見せつけてやれ」と。勝っても負けても最後の試合ですし、6連勝でここまでたどり着いた時点で胸を張っていい。もちろん世界一になれたら最高ですが、彼らが悔いのない戦いを見せてくれれば、それで十分という心境でした。
結果的にこれ以上ない結末になったわけですが、勝敗を分けた大きなポイントは序盤にあったと見ています。ひとつ目は、2回にターナーのホームランで先制された直後。リアルミュートとアンダーソンにヒットを打たれて2死一・二塁とピンチが広がった場面で、1番のベッツをレフトフライに仕留めた。あそこで今永昇太と中村悠平のバッテリーが踏ん張ったからこそ、裏の攻撃で村上のホームランから一気に逆転まで持っていけた。もし点差を広げられていたら、かなり厳しい試合展開になっていたでしょう。
そしてふたつ目が、2対1と逆転して迎えた3回の戸郷翔征のマウンドです。テンポよく2アウトをとったあと、連続四球で一・二塁になり、バッターボックスには絶好調のターナー。この場面での中村のリードが見事でした。3球目、インハイの速球でファウルを打たせて追い込みましたよね。このピンチで、なかなかあそこに投げきるのは難しい。少しでも甘くなればスタンドに放り込まれるリスクもありますから。キャッチャーがよくサインを出したし、戸郷もそれにしっかり応えました。
ターナー目線から見れば、あそこで差し込まれたことでインサイドの速球に意識がいってしまい、次のフォークにタイミングが合わなかった。空振り三振の布石になった“3球目”が、まさしく勝負を分けた1球だったと思います。