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「1分50秒で13億円稼いだ」パンサラッサが話題…なぜサウジとドバイに日本馬が殺到? 高額賞金だけではない“海外遠征ブーム”の理由
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySipa USA/JIJI PRESS
posted2023/03/04 17:01
吉田豊を背にサウジカップを逃げ切ったパンサラッサ。1レースで1000万ドル(13億円超)の賞金を稼ぎ、日本馬の歴代獲得賞金ランキング3位に浮上した
今年は20頭中12頭がサウジからドバイに転戦
もうひとつ、数字が示す答えがある。それは、今年のサウジカップデー諸競走に出走した日本馬20頭のうち、半数以上の12頭が、サウジから直接ドバイのメイダン競馬場に移動したことだ。そのなかには、前出のパンサラッサ、カフェファラオ、ジオグリフ、クラウンプライド、ジュンライトボルトもいる。何のために移動したかというと、ドバイワールドカップ諸競走に出走するためである。
ちなみに、昨年は、サウジカップデーに出走した日本馬12頭のうち7頭が、直接ドバイに入った。
それはつまり、2つの国へ、それも、ともに招待レースで渡航費などのかからないところへ、セットで遠征できてしまうことを意味している。サウジのリヤドとドバイは飛行機で1時間半ほどと、非常に近いので、馬への負担も少ない。
第2の遠征先で行われるドバイワールドカップ諸競走もまた、高額賞金で知られている。
サウジカップは3年前にできたばかりで、まだ歴史は浅い。が、ドバイワールドカップは今年で27回目を迎える。日本馬は第1回の1996年からほとんど毎年、諸競走に出走している。
つまり、ドバイワールドカップ諸競走は、日本馬のローテーションとして定着しているのだ。そこに、前述したように、サウジもセットになり、チャンスが倍になった。
何より、日本馬がドバイでも結果を出していることが大きい。すべて記すと長くなるので一部にするが、日本馬は、今年25回目を迎えるドバイシーマクラシック(芝2410m)を4回、27回目となるドバイターフ(芝1800m)を6回も勝っている。前者の1着賞金は348万ドル(約4億5889万円)、後者は290万ドル(約3億8240万円)である。
芝の強豪が多いヨーロッパはこの時期はシーズン前なので、仕上げの点で日本馬が大きくリードできる。また、ヨーロッパのレースに出るときのような外厩での調整ではなく、競馬場内の厩舎地区に滞在し、競馬場のコースで調教できる形も、小倉や北海道シリーズに参戦するのと同じような形なので、やりやすい部分もあるだろう。