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「1分50秒で13億円稼いだ」パンサラッサが話題…なぜサウジとドバイに日本馬が殺到? 高額賞金だけではない“海外遠征ブーム”の理由
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySipa USA/JIJI PRESS
posted2023/03/04 17:01
吉田豊を背にサウジカップを逃げ切ったパンサラッサ。1レースで1000万ドル(13億円超)の賞金を稼ぎ、日本馬の歴代獲得賞金ランキング3位に浮上した
サウジカップで3着になったカフェファラオは、一昨年、昨年とフェブラリーステークスを連覇しており、もしフェブラリーに回っていれば、史上初の3連覇を狙える立場だった。が、ここで3着となり、フェブラリーの1着賞金の倍以上の2億6373万円を稼いだ。
ジオグリフは初のダートで適性を試しながら、自身が勝った皐月賞(昨年の1着賞金は1億5000万円)を上回る1億9779万7500円を手にした。
競走馬にとって、獲得賞金というのは、自身の価値と強さを示すものだ。オーナーサイドにとっても、非常に意味のある参戦だったと言えよう。
なぜサウジとドバイに日本馬がこぞって参戦するのか
サウジカップデー諸競走は、主催者が人馬の渡航費用を負担する招待レースである。
当然、出走を希望する馬は多くなり、今年は20頭の日本馬が参戦した。
それはすなわち、この時期に日本のレースに出走可能な20頭の実力馬が日本を留守にする、ということでもある。空洞化とまで言うのは大げさかもしれないが、国内のレース、なかでも、サウジカップと条件が近いフェブラリーステークスのメンバーが寂しくなるのは事実である。
さらに、サウジカップデー諸競走からひと月後、3月末にはドバイワールドカップ諸競走があり、日本馬が大挙して押し寄せる。今年は史上最多の27頭が出走を予定しており、ドバイシーマクラシックに昨年の年度代表馬イクイノックス、連覇のかかるシャフリヤール、ドバイターフにダービー馬ドウデュース、マイルチャンピオンシップ優勝馬セリフォスといったGIホースがエントリーしている。
なぜ、これほど多くの日本馬が、日本のレースではなく、サウジとドバイのレースに出走するのか。
答えはいくつかあって、そのひとつが、これまで述べてきた、魅力的な高額賞金だ。フェブラリーステークスを勝つことと、サウジカップで5着以内に入ることでは、どちらのほうが難しいか。GIで1着になること、つまり、勝ち切ることは、どのレースにおいても楽ではない。その馬のタイプにもよるので一概には言えないが、「着を獲りに行くこと」を選ぶ陣営が出てきて当然だろう。