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あの言葉のルーツも実はプロレス? 蝶野正洋に裏切られ、武藤敬司に沈められた男の“魂の叫び”…94年新日タッグ戦の“しょっぱい”試合
posted2023/03/03 11:01
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph by
東京スポーツ新聞社
不愛想だったり失礼な態度に向けて、ごくフツーに使われる「塩対応」なる言葉。あまりよろしい言葉ではないが、大相撲の世界で古くから使われている隠語「しょっぱい」を語源とする。
「しょっぱい」とは、塩が撒かれた土俵に寝転がされたり、這ってばかりいる弱い力士を指す場合などに使われる。強さこそが正義であり、すべての序列を決める世界において、単に相撲が弱いだけでなく、ダメなこと全般を指す言葉としても使用され続けてきたらしい。
この言葉は力道山をはじめ、角界出身者が多かったプロレス界でも日常用語として使われ続けてきた。意味は大相撲よりもさらに広範囲となり、単に強い弱いや勝敗ではなく、盛り上がりに欠けるつまらない試合などに対して使われることが多い。
蝶野が試合放棄「しょっぱい試合ですみません!」
さて。そんな隠語を世間一般に広めてしまったのはプロレス界のほうだった。同じくプロレス界を経由して、世に拡散してしまった大相撲の隠語に「ガチンコ」→「ガチ」があったりする。
きっかけは29年前(1994年)の秋に新日本プロレスで開催された『第4回SGタッグ・リーグ戦』だった。
この優勝決定戦(10月30日、両国国技館)にて、蝶野正洋とスーパー・ストロング・マシンが仲間割れ。自らマスクを脱ぎ捨てたマシン(正体は平田淳二=のちに淳嗣と改名)が蝶野にマスクを叩きつければ、怒りの蝶野は試合を放棄して控室へ。1人リングに取り残され、ローンバトルを強いられた素顔のマシンは当然の如く武藤敬司&馳浩に敗れた後、自らマイクを握って「こんな、しょっぱい試合ですみません!」と叫んだことに端を発している。