濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「基礎がない」「正直こんなもんか」人気団体スターダムが“外敵”の参戦で問われる実力…橋本千紘との対戦を狙う朱里の“真の目的”は?
posted2023/03/03 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Masashi Hara
スターダムの歴史の中で最強の“外敵”だったのが里村明衣子(センダイガールズプロレスリング=仙女)だ。団体最高峰の“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムを獲得した、唯一の団体外日本人選手が里村なのである。
歴史は巡ると言うべきか、今また仙女からスターダムに選手が乗り込んできた。里村が育て上げた現エース、橋本千紘だ。
高校、大学とレスリングで活躍。全国大会でも上位入賞の常連だった。大学卒業後に仙女入門、デビュー戦に勝利すると(タッグパートナーは神取忍だった)、1年後には里村を破りシングル王者に。得意技はジャーマン・スープレックス。往年の名手にちなんで「オブライト」というオリジナルのネーミングもある。
DDTに参戦し、男子選手と対戦して6人タッグ王座を奪取したことも。昨年12月には、MMAからプロレスに進出している青木真也からも3カウントを奪った。橋本は現在の女子プロレス界における“強さの象徴”と言っていい。青木は試合前から「この業界で誰よりも練習している」と橋本を絶賛していた。
橋本「こんなもんなんですか、スターダム」
橋本がスターダムに参戦するきっかけは、もう1人の“強さの象徴”朱里だった。昨年12月の両国国技館大会、ジュリアに敗れて赤いベルトを手放した朱里は、橋本にスターダム後楽園ホール大会への来場を呼びかける。ここ数年、仙女とスターダムは交流がなかったから「難しいかもしれない」と朱里は考えていたそうだ。
それでも、橋本にスターダムを見てほしかったしリングで試合がしたかった。結果としてベルトを失ってからの新たな目標という形になったが、本来はベルトを守って対戦を呼びかけたかったという。
1月6日の後楽園大会、朱里が出場するメインイベントの直前に橋本が姿を現した。朱里の勝利を見届けるとリングへ。そして言い放った。
「今日は残念でした。こんなもんなんですか、スターダム。もっと凄い闘いやりましょうよ」