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節税対策不発で追徴金180億円でもライダー史上最高に稼いだロッシに比べ、マルケスや日本人選手の年収はどれくらい? 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2023/02/23 11:04

節税対策不発で追徴金180億円でもライダー史上最高に稼いだロッシに比べ、マルケスや日本人選手の年収はどれくらい?<Number Web> photograph by Satoshi Endo

バイク界ではダントツに稼いだロッシ。2013年には経済誌『Forbes』のモータースポーツ選手長者番付でF1など4輪勢に割って入って5位となった

 マルケスの場合、タイトルを獲り続けていたころは契約金がどんどんあがっていたと思うが、現在の契約は2021〜24年までの4年契約という異例の長さであり、4年間で8000万ユーロ(約114億4000万円)と推測される。さらに、レッドブルなどからの契約金も含めれば、いやはや、年収総額はいくらなのかと感嘆するばかり。

 そうした高給取りのライダーたちは、低税率の国に居住して節税を図る。現在、もっとも多いのが、スペインとフランスに挟まれたピレネー山脈にあるアンドラ公国で、MotoGPライダーの多くがこの国の居住者になっている。マルケスも2014年に節税のために低税率のアンドラへの移住を考えたが、スペインのファンから猛列なバッシングを受けて断念したことが話題になった。

 マルケスは現在でもイチバンの稼ぎ頭だが、MotoGPクラスのほかのライダーたちの契約金は、コロナ禍などによる世界経済悪化の影響で減少方向にあると言われる。2020年にチャンピオンを獲得したジョアン・ミルや2021年のファビオ・クアルタラロも、日本円で10億円に届かなかったと推測されている。

日本人ライダーの収入は?

 一方、日本人ライダーの場合、過去をさかのぼっても契約金が話題となることは稀だ。とはいえ、ノリックこと阿部典史が1994年に18歳で世界デビューを果たしたときは契約金が100万ドル(当時約1億円)で話題になったし、やはり居住地をアンドラにした結果、日本の国税庁から脱税を指摘されたこともあった。また、1999年にアプリリアから500ccに参戦した原田哲也の契約金は400万ドル(当時約4億円)だった。おそらく、これがいまでも日本人選手の最高額ではないか。ノリックは当時、原田の契約金のニュースを見てこう語った。

「500ccに参戦することになった原田さんの契約金が4億円。日本人もこんなに稼げるようになったんだって、ほんと、うれしい。お金だけが目標でレースをやっているわけじゃないけど、4億円のニュースはレースをやっている人たちの励みになったし、目標にもなると思う」

 あれから20数年が過ぎて、世界に出て行くのがどんどん厳しい時代になっている。さすがにMotoGPクラスには持参金つきで出場しているライダーはいないが、Moto2、Moto3クラスは、ほとんどのライダーが資金持ち込みで参戦しており、その相場は3000万円から6000万円くらいとされる。億単位のF1に比べれば遥かに少ない額だが、毎年、家が一軒建つだけの金を投入することになる。

 今年はMotoGPクラスに中上貴晶、Moto2クラスに小椋藍と野左根航汰、Moto3クラスに佐々木歩夢、鈴木竜生、鳥羽海渡、山中琉聖、古里太陽の8人の日本人選手が出場し、チャンピオン獲得の期待が寄せられる選手もいる。プロスポーツ選手の年収はその実力を測るバロメーターでもある。時代は厳しくとも、ノリックや原田哲也のように、契約金が話題になる選手に登場してもらいたいなと願っている。

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