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14歳での初優勝から6年…ジャパンカップ優勝、クライミング・伊藤ふたば(20歳)は何がスゴい?「パリ五輪に向けて大事な年」
posted2023/02/25 06:03
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JIJI PRESS
最終4つ目の課題を一度のトライで鮮やかにクリアすると、アリーナを埋め尽くした観衆の方へ振り返り、誇らしげにガッツポーズをした。
スポーツクライミングのボルダリング日本一を競うジャパンカップが2月上旬に東京で行われ、女子は決勝で20歳の伊藤ふたばが4つの課題をすべて一度の挑戦で攻略する“オール一撃完登”で優勝。3課題を完登して2位になった東京五輪銀メダリストの野中生萌を抑え、3年ぶり3度目の頂点に立った。
「決勝ですべての課題を一撃で完登できたので率直にうれしい。決勝ですべて一撃というのは多分、初めての経験。すごく良かった」。喜びを噛みしめながらそう言った。
スポーツクライミングが東京五輪の追加種目に決定した翌年の'17年1月、史上最年少の14歳でボルダリングジャパンカップ初優勝を飾り、脚光を浴びた。手足が長く、動きがしなやか。柔軟性を生かした登りで難しい壁を次々と攻略する勇ましい姿と、生き生きとした笑顔で、多くの人を魅了する存在となった。
パリ五輪に向けての大事な1年
ところが、東京五輪を目指して鍛錬に励んでいた'20年12月。国際連盟と日本協会の五輪出場基準の解釈が異なったことにより、東京大会への道が絶たれるという裁定がスポーツ仲裁裁判所で下された。
悲劇的な悔しさから立ち上がった伊藤が今、目指しているのは、開催まで1年半を切った'24年パリ五輪。以前はパワーが求められる課題を若干苦手としていたが、豊富な練習量で体が大きくなり、強化に成功している。ジャパンカップでは「自信になる登りができた」と胸を張りつつ、「改善できる部分は改善して、さらに強くなりたい」と意欲もますます高まっている。
東京五輪では、登った課題数を競うボルダリング、高さを競うリード、速さを競うスピードの複合のみだったが、パリ五輪は「スピード」と「ボルダリング・リードの複合」の2種目が行なわれる。伊藤は今後、W杯に出場。8月にはパリ五輪の出場枠が懸かる世界選手権(スイス・ベルン)がある。
「パリ五輪に向けて大事な年に幸先の良いスタートを切ることができた。次は世界選手権の出場枠を取ることから集中してやっていきたい」
悔しさを乗り越えて身につけた逞しさが伊藤を一層輝かせている。