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詐欺容疑でベルト返上、ぱんちゃん璃奈の“謝罪会見”に残る疑問…取材記者が覚えた“違和感”の正体「なぜ復帰会見を同時に行ったのか?」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2023/02/21 17:02

詐欺容疑でベルト返上、ぱんちゃん璃奈の“謝罪会見”に残る疑問…取材記者が覚えた“違和感”の正体「なぜ復帰会見を同時に行ったのか?」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

2月17日に会見を開き、詐欺事件の謝罪とともに格闘技復帰を表明したぱんちゃん璃奈

「ファイトマネーは全額寄付」への多くの疑問

 ここでまた疑問が出てくる。実はファイターの収入はファイトマネーだけではないのだ。格闘技界には選手が応援団や後援会、ファンなどから直接、チケットの購入を受け付ける「手売り」という慣習がある。今回、手売りで得た収入も寄付するのか。会見後、SNSでチケット予約の告知をしていたのはどういう意図か。さらに言えばスポンサーフィーはあるのか。あったとして「ファイトマネー」ではないから寄付しないのか。細かいところで意地悪な見方をしようと思えば、いくらでもできる。会見でベルトを返上したのにインスタグラムのアイコンがベルト姿になったままで、そこもさっそくコメント欄で指摘されていた。

 シンプルに言って、運営もぱんちゃん自身も脇が甘いように思える。自分たちの行為や言葉が「どう受け止められるか」という視点が欠けていると言えばいいだろうか。1月にぱんちゃんが公開したYouTubeの謝罪動画も、最初の段階では広告が入っていたことが批判されている。ミスにしてもうかつすぎた。

 ぱんちゃんは批判を当然のこととして「自分はたくさん叩かれるべきだと思います」とも言った。しかしネットによる“私刑”が話題になることも多い中で「叩かれるべき」は言葉が軽くないだろうか。「悪いことをしたら何を言われても仕方ない」という考え方を肯定していると受け取られてもおかしくない。

 問い直すと、誹謗中傷はよくないが「自分に関しては」何を言われても受け止めるとぱんちゃん。そう言うしかないのだろうが、やはり慎重になってほしかった。宮田氏はぱんちゃんの言葉を受けて、過度な誹謗中傷などについては運営側がぱんちゃんを守る必要もあると付け加えた。こうしたことは質疑応答を重ねる中で言葉がまとまっていったような形だ。

同時に行われた「謝罪会見」と「復帰会見」への違和感

 ネット中継もされた会見が終了し、ぱんちゃんが退席する。そこから残ったマスコミによる宮田氏への「囲み取材」が始まった。質問はマイクを使わず挙手制でもなく、よりざっくばらんに、細かい点まで答えるという取材形式だ。

 ここで筆者が聞いたのは、なぜ「謝罪会見」と「復帰会見」を同時にやってしまったのかだ。まずはしっかりと謝罪をし、時間をおいてから試合についての会見を行なったほうがよかったのではないか。たとえば芸能人が事件を起こしたとして、謝罪会見の場で「復帰第一作」の告知はしないだろう。

 今回のような形では、謝罪会見の場でKNOCK OUTの宣伝をしているようなものではないか。宮田氏の答えは「宣伝というか発表ですよね」だった。こんな言葉も印象に残った。

「謹慎期間を設けるとして、どれくらいがふさわしいのか。もしどなたかに決めていただけるのであれば、決めていただきたいです。3年なのか1年なのか3カ月なのか。オーソドックスに当てはまるようなもの(ペナルティ)は今回ないと思うので」

 確かに「詐欺容疑で逮捕された格闘家のペナルティにふさわしい規定」などない。しかしそれを考えることが、事件に真摯に向き合うということだと思うのだが。

【次ページ】 「私を見たくないという声がたくさんあるのは分かります」

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