濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
詐欺容疑でベルト返上、ぱんちゃん璃奈の“謝罪会見”に残る疑問…取材記者が覚えた“違和感”の正体「なぜ復帰会見を同時に行ったのか?」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/02/21 17:02
2月17日に会見を開き、詐欺事件の謝罪とともに格闘技復帰を表明したぱんちゃん璃奈
「私を見たくないという声がたくさんあるのは分かります」
会見中、最も切実に伝わってきたのは、復帰に向けたぱんちゃんの言葉だった。逮捕直後は復帰など考えられなかった。事件の内容からして、格闘技界に泥を塗るようなものでもあった。ただ1月に謝罪動画を公開して以降、さまざまな人たちとやりとりをする中で気持ちが変わっていったという。
「関係者の方、選手の方、トレーナーさん、ジムの方。いろいろな方が“もう一度頑張ろう”と。スポンサーさん含め、力を貸してくれる人がたくさんいると知って、自分ができることはこれしかないんだと」
「私を見たくないという声がたくさんあるのは分かります。ただ自分がしたことから逃げるのではなく、反省をして、力を貸してくださった方、優しい言葉をかけてくださった被害者の方に一生感謝して、それでもリングに上がって拳で見せていく選手になりたい」
ぱんちゃんは「格闘技に助けてもらった人生」だと言った。学生時代は陸上の選手。しかしケガがもとで挫折し競技から離れ、学校もやめた。無為の日々を変えるべく上京し、キックボクシングに出会った。キッズ、ジュニア時代から活躍してきた選手も多い中、20歳を過ぎてからのスタート。だから余計に、必死にやるしかなかった。その結果として得たのがチャンピオンベルトだったが、思わぬことで手放すことになった。
記者の質問に、ぱんちゃんは声を震わせた
「たくさんの人に支えてもらっていることに気づきました」
事件の発端は、知人に投資詐欺に遭い多額の損失を出したことだという。サイン入りポスターの偽造などする前に、いつも支えてくれる、助けてくれる周囲の人たちの顔を思い出し、頼ることは考えられなかったのか。筆者が問いかけると「その時はそれができなかったです」とぱんちゃんは声を震わせた。
「格闘技に助けてもらった人生なのに、格闘技を利用して悪いことをしてしまった。ぱんちゃん璃奈というリングネームに助けられてきたんだから、“ぱんちゃん璃奈”を悪いことをした人で終わらせたくないです。ファイターとして終わりたい」
マイナスから這い上がる。そして周囲の人々に恩返しをする。それがこれからのテーマになる。表舞台から姿を消したほうが楽なのかもしれないのに、再びリングに上がる。その決意に関しては疑いようがないと筆者は感じた。ただあまりにもまっすぐで脇が甘く、意地悪な見方を誘発するような会見になってもいた。
格闘技にたとえるなら「気持ちでは負けない」とノーガードで特攻するようなもの。ネット的な言い方をするなら「炎上上等」か。