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「クビになったらどうなるんだろう」“J4、J5級”選手が「DF板倉滉の専属シェフ」に転身…29歳引退後に実った“4つの学び”とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2023/02/17 11:00
カタールW杯で奮闘し、ブンデスリーガでも主力として存在感を見せる板倉滉。彼を支える専属シェフのストーリーとは?
弁当を販売するうえで懸念されるのが、売れ残りだ。SDGsへの関心が年々高まっている近年、フードロスを減らすのは企業の役割でもある。何より、販売数のめどがたつ状況は経営面を考えたときに大きな意味がある。売れ残るリスクが低くなれば、値段を下げられるからだ。そして、値段が下がれば、金銭的に恵まれているとはいえないアスリートにとって最高のギフトとなる。最終的に、この種の弁当としては破格となる500円程度で売り出すことができた。
弁当販売での経験で得た喜びや楽しさとは
販売が始まるとチームメイトの間で弁当の魅力が口コミでひろがり、最盛期には、市原の選手のうち15人ほどが連日のように買い求めた(もちろん、値段が極限まで下げられたのはこのカフェが市原のスポンサーだったことが大きかった)。なお、池田はその後、一般のお客さんへランチタイムに提供するサラダのメニュー開発などにもかかわることになる。
こうして、Win-Win-Winともいえる、三方良しの状況ができた。メインの消費者となる市原の選手たち、市原のスポンサーを務めるなど社会に貢献しようとするカフェの社長、この仕組みを提案した池田。みんながハッピーになった。
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見逃せないのが、この経験を通して池田が得たものである。それが、「食事によってアスリートをサポートする」際の喜びや楽しさだった。Jリーガーを目指す池田が、その境遇を嘆くのではなく、周囲の人たちを笑顔にするために熱心に取り組んだから得られたものだった。
置かれた場所で咲くための努力は、こうして池田の未来につながる財産を残してくれたのだ。
ここまでは、与えられた環境で頑張ることで得られるものについて振り返ってきた。続く#2では、残り2つのポイントから――手にした環境の外へフィールドを広げて、自らの努力と才能をアピールしていくための、現代ならでの取り組みについて振り返っていく。
<#2につづく>