核心にシュートを!BACK NUMBER
「出汁をドイツに持ち込みました」板倉滉のW杯直前復帰を支えたシェフの“隠し味と栄養”「池田さんに頼んで良かったなと思うのは…」
posted2023/02/17 11:02
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Christian Verheyen/Getty Images
「地域リーガー系ユーチューバー」から華麗な転身をとげ、日本代表の板倉滉の専属料理人になった池田晃太。その最終話では板倉からシェフになるオファーを受けて採用されるまでのエピソードと、素顔の板倉について余すことなく語ってもらった。
働く予定だったお店も快諾してくれた
「実は、以前からYouTubeをちょこちょこ見させてもらっていたんです」
初回のZOOMでの顔合わせは板倉滉の事務所のスタッフと行なったのだが、その終盤に板倉もオンライン上に登場した。そこで冒頭の言葉をかけられたのだ。専属シェフを探していた板倉たちからそう言われて、池田はYouTubeの効果を実感し、背筋がゾクッとした気がした。
「『YouTubeすごいな。あぁ、頑張ってやっておいて良かった』と思いましたね」
お互いのために試用期間を設けたいので、しばらくドイツに滞在して、プロの料理人として食事を作ってもらえないか。それが板倉サイドの提案だった。正式にシェフになれば、板倉の家で毎日顔をあわせることになる。そういう期間を設けるのはお互いにとって自然な流れだ。
池田はその場で快諾した。
「勝手に即決してしまいましたけど、働かせてもらう予定になっていた『グリューン』さんや『花笑庵』さんとの約束を守れなくなるわけで。失礼な話だと思いましたけど、どうしても挑戦してみたいと伝えたら、『それならば……』と応援してもらえるようになりました。そこには感謝しかないですよ」
日本サッカー界の宝を支える仕事にノーをつきつけられる者などそうはいないし、将来は「食でアスリートをサポートしたい」という夢を抱き、全力をつくしている池田の姿を彼らは見てきたから、快諾してくれたのだろう。
ドイツで調達しづらい“品質にこだわった”日本テイスト
ドイツへ渡るまでに池田が取り組んだのは主に2つだった。
1つが、それまで自分なりに学んできた食と栄養について、体系立てて学び直すこと。本を買い漁り、読み込んだ。短期間であれほどの本を読んだのは初めてだったかもしれない。
「本では栄養面について学んだのですが、その他にはアスリートに良さそうなレシピを探して、実際に自分で作ってみて、チェックしていましたね。そうやってレパートリーを増やすなど、『この先もお願いしたい』と言ってもらえるようにと必死になって準備をしていました」
もう1つが、現地で手に入る食材について調べることだった。