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WBC栗山英樹監督は”ヌートバーと心中する”覚悟? 侍ジャパン最後の1枠をめぐって「最後の最後に自分の中で決断したこと」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2023/01/28 11:01
WBCに臨む日本代表30人のメンバーを発表した栗山英樹監督。外野手としてラーズ・ヌートバーを選出した
「投手で我慢して勝つと決めたなら、投手交代のところでそこが足りなくなるというのは許せないと自分では思った。そこのところを厚みを増して戦っていくぞというふうに決めた」
栗山監督が挙げた2人の投手とは
特に意識しているのは走者を置いた場面でも、迷わずにスイッチすることを念頭に入れた人選だ。メンタル的にも難しい場面。技術的にも空振りがとれるフォークやシンカーなど特殊な球種を持っていることが必要条件となる。そういう場面での登板経験とスキルを持つ投手として、栗山監督が挙げたのが巨人の大勢投手とオリックスの宇田川優希投手だった。
大勢は巨人では基本的にはクローザーで回の頭からマウンドに立っているが、昨年10月1日のDeNA戦では満塁の場面でマウンドに上がって3者連続三振で切り抜けた実績がある。代表でもクローザー候補で、試合終盤に待機している状況でも8回にピンチがあればそのままマウンドへという想定だ。
一方の宇田川はもともと中継ぎのスペシャリスト。昨年の日本シリーズでも第4戦の1死三塁の場面でリリーフして2者連続三振でピンチを断って、シリーズの流れを変えた場面が印象的だ。この2人に阪神・湯浅京己投手を加えた3人が走者を置いた場面での登板要員となる。
「『頼むここで抑えてくれ』みたいに願って投手を使う(続投させる)というのは許されないと思っている。状態が悪ければスパッといかないといけない」
栗山監督はこう語って早め早めの継投を意識していることを明言。もちろん先発、第2先発の後を受けてクローザーまで、1試合でさらに投手は必要になる。そのためには質だけでなく量でも圧倒できる布陣を揃えることを考えて、最終的に投手を15人とする決断をしたという訳だ。
外野手5人という構成については…
しかしその決断の結果として、どこかを犠牲にしなければならない部分も出てくる。それが内定選手が明らかになる中で、多くの指摘が飛んだ外野手が5人という構成だった。
5人の配置を考えると左翼にボストン・レッドソックスの吉田正尚外野手とソフトバンクの近藤健介外野手、右翼に鈴木でバックアップに近藤が回ることも可能だ。
一方センターの守備経験がある選手は基本的にはヌートバー1人で、一応、バックアップメンバーとしてはソフトバンクの周東佑京内野手が控える。ただもしヌートバーの状態が悪いケースには果たして先発で周東を使うのか? 選択肢としては鈴木にセンターを守ってもらって、近藤をライトに入れるということもある。ただ鈴木に不慣れなセンターを守らせる、という選択が得策かどうかも疑問の残るところだ。
だとすれば中堅を守れる、例えばヤクルトの塩見泰隆外野手のような選手を入れておくべきではなかったか、という声があるのはもっともなところなのだ。
そこで選手選考の渦中の栗山監督の発言で一つ、気になっていたことがあった。