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立教大55年ぶり箱根駅伝ゴールでも…「自分たち4年生は何か残せたのか?」誰も走れなかった“最初で最後の箱根”、4年生キャプテンの苦悩
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/19 17:05
箱根駅伝で55年ぶりにゴールした立教大。アンカーの安藤圭佑(2年)を迎えるキャプテン・ミラー千本真章(4年)
「出場決定を受けて、11月は練習の内容も濃かったですし、雰囲気が良かったんです。でも、12月中旬は監督も沖縄へ行き、残ったメンバーだけになると、緩みが見られるようになって……。空気が淀んでしまった感じで、どうしたら雰囲気を変えられるか悩みました。去年まで12月といえばレースもなく、冬季トレーニングの時期だったので、どうやって過ごしたらいいか、みんなも分からなくて。これは来年への課題として申し送り事項ですね」
その時期には箱根駅伝をめぐる報道も増え、立教についての文章表現に気持ちが揺さぶられることもあった。
「中には『立教の16人は全員が3年生以下。4年生はいないので成長する一方。未来は明るい』みたいなことが書かれているメディアもあって、僕はそういうのをSNSで見るたびに、『自分たち4年生は何か残せたのかな?』と落ち込んでました」
後輩から不評だったLINEノート
ナイーブになっていたのである。それは主将になってから試行錯誤の連続だったからでもある。特に、就任してから数カ月は、「やり甲斐を感じられない」と短距離ブロックの同級生に愚痴を聞いてもらっていた時期もあった。
「いろいろ新しい試みも実行しました。僕が3年の冬はケガ人が多く、練習の参加者が少なかったんです。『あれ、アイツなんで休んでんの?』と思うことも珍しくなくて。そこでLINEノートで、月曜と木曜にコンディションを書き込むようにしたんです。でも、これが後輩には不評で(笑)。『自分たちの学年になったら廃止します』とか言われるほどでした。でも、僕ら4年生の思いとしては、状態を書き込むことで、上野監督とのコミュニケーションの回路を増やして欲しかったんです。たぶん、立教は学生と監督がよく話すチームだとは思います。でも、毎日全員と話せるわけではないですからね。監督はひとりで指導されているので、いろいろ情報を提供した方がいいと思いましたし」
うれしいことに、最初は抵抗していた1学年下の後輩たちも、箱根駅伝の後に新チームになってから、このLINEノートを活用してくれているという。
「僕らのやったことも、ムダじゃなかったかなと思って(笑)」
「みんな上野監督のことが大好きなんですよ」
ミラーがこれだけ部にコミットできたのは、上野監督との出会いがあり、「箱根駅伝出場」というミッションを共有できたからだ。