「高校3年の時、ホームルームの時間中に『立教に上野監督就任』というニュースが流れてきた瞬間のことが忘れられません。1500mの記録を3分44秒30にまで伸ばしてくれましたし、関東インカレで優勝出来たのも監督と出会えたからです。監督って、走るのが速いだけじゃなくて、行動力がすごいんです。とにかくひとりで全部やってしまう。大阪の日本選手権に向かうのにも選手は新幹線を使わせてもらいましたが、監督は主務と自分が運転する車で行きましたから（笑）」

　箱根駅伝を目指すミッションを、上野監督と共有できた時間は本当に貴重だったとミラーは話す。

「ゼロの状態から立ち上げて、目標よりも1年早く箱根駅伝に到達できましたし、大手町までたすきをつなげました。キャプテンの僕からすると、もう少し学生に対して厳しく接して欲しいという思いもありましたけど、僕も含めて、みんな上野監督のことが大好きなんですよ」

立教大・上野裕一郎監督。2018年12月に監督に就任（写真は10月の箱根駅伝予選会で、55年ぶり出場が決まったあと）　©Yuki Suenaga

55年ぶりの箱根駅伝は総合18位だった　©Yuki Suenaga

「人事部の方が、大手町まで来てくださいました」

　ミラーは2月19日に大阪で行われる「男女混合駅伝」に参加し、それが引退レースとなる予定だ。

「4年生には退寮した仲間もいますが、僕は最後の最後まで現役を続けてます（笑）。でも、本当に体育会の陸上競技部に入って良かったと思ってます」

　ミラーの後は、宮澤徹（國學院久我山）が主将を継ぐ。

「宮澤は新チームのミーティングで、『駒澤だから負けても仕方がない』という発想をしていては、ずっと駒澤には勝てないと話していました。たくましいですよね。それを聞いた上野監督が『僕も駒澤大学には勝てると思っていなかったので、発想を改めます』と言ってました（笑）。みんな、箱根駅伝を経験したことで来年はもっと強くなるはずです」

　ミラーは卒業後、陸上競技からは離れ、社会人としての生活に入る。就職先は、サッポロビールだ。

「人事部の方が、大手町のフィニッシュ地点にいらしてくださいました。これも、箱根駅伝が作ってくれた縁ですよね。ありがたいです」

　ミラー千本真章の名前は、箱根駅伝を走った選手としては記されない。

　それでも、立教を復活に導いたキャプテンとしてその名は残る。

©Yuki Suenaga

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