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大迫塁と福田師王…神村学園の“超高校級コンビ”が過ごした濃密な6年「また一緒にやりたければ代表に入ればいい」〈選手権Vならず〉
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byL:Kiichi Matsumoto/R:AFLO SPORT
posted2023/01/08 11:10
神村学園のMF大迫塁とFW福田師王(ともに3年)。惜しくも決勝進出は逃したが、超高校級コンビとして大会の主役になった
福田がU-18日本代表候補に飛び級で選出されたのである。大迫はその翌月のU-17日本代表候補のキャンプに選出。つまり、ポジションの違いはあるものの、立場が逆転した。
「完全に師王に抜かされてしまった。認めたくはなかったけど、はっきりと目に見える形で出て、認めないといけないと思った」(大迫)
危機感が最高潮に達した大迫は「何かを変えないとその差は広がってしまう」とすぐに行動した。
「自分には師王のようなゴールを決め切るという“怖さ”がない。ボールを散らしたり、繋ぐのではなく、どんどん前に行ってシュートを打っていかないと怖い選手になることができない」
そう考えた大迫は、有村監督に「僕をトップ下にしてください。点が取りたいです」とボランチからのコンバートを直訴。福田の動きを参考にしながら、前に出るタイミング、ボールの受け方を学び、全体練習後にはシュート練習に打ち込んだ。
ゴール数を競い合うようになった2人
そんな懸命な大迫の姿に今度は、福田が再び刺激を受ける。大迫のパスを合わせることはもちろんだが、ストライカーである以上、大迫にゴール数を上回られたら面目が立たない。
プレーの幅を広げようとする大迫と、決定力に磨きをかける福田。ここから2人は“ゴール数”を競い合うようになった。
「塁を抜かしたなんて一度も思ったことがない。塁は上手いだけじゃなくて日々の努力がすごい。シュート練習も本当に手を抜かないし、いつも真剣にやっている。それを見て自分が手を抜くなんてことは絶対にできない。僕にとって塁はいつまでもピッチ内外全てにおいて目指すべき存在なんです」(福田)
切磋琢磨した時間は、大迫がボランチに戻った高校3年のシーズンで相乗効果を生んだ。福田は、精度を増した大迫のミドルパスやクロスに対しての入り方や受け方を工夫するようになり、大迫は常に複数のマークに合う福田のために一瞬のスペースを逃さない絶好のタイミングで正確なパスを送り込むことを徹底した。
磨かれた2人のコンビネーションは輝き、選手権では多くの観客を魅了するまでに成長した。その手応えを誰よりも2人がわかっていたからこそ、最後まで戦いたかった。