“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「将来は吉田麻也選手のように」「筑波大でもキャプテンをやりたい」進学を選んだ高校No.1ボランチが名門・前橋育英で担った“嫌われ役”
posted2023/01/06 17:18
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO SPORT
夏のインターハイ王者で、高校サッカー選手権の優勝候補筆頭と期待された前橋育英は、またしても国立のピッチに辿り着けなかった。
今大会でナンバーワンのクオリティーを見せていたタイガー軍団の前に立ちはだかったのは、奇しくも昨年度と同じ九州の雄・大津。1人少ない状況でスコアレスドローに持ち込んだが、PK戦の末に姿を消した。
試合後のミックスゾーン、キャプテンの徳永涼(3年)は涙を見せながらも気丈に振る舞った。
「僕らが流している涙は悔し涙と言うより、この仲間ともうサッカーがやれなくなることへの寂しさや悲しさの涙です。やれることは全部やりました。仲間との絆も感じましたし、みんなで次のステップに羽ばたいていきたい」
自分の考えをしっかりと持ち、コミュニケーションを重ねながら組織を前に推し進められる稀有なキャプテンシー。時には厳しく、時には寄り添って仲間の先頭に立ってきた徳永の言葉に、質問しているこちらが引き込まれてしまった。
Jスカウトも熱視線を送ったボランチ
もちろん、徳永の魅力はピッチ上にもある。
広い視野によって相手のプレスや立ち位置を素早く把握し、次のプレーに移行しやすい場所にボールをきちんと止める基礎技術。そこから素早い足の振りでミドルパスやサイドチェンジ、攻撃のスイッチとなる縦パスを打ち込み攻撃のリズムを生んでいく。高い戦術理解度と状況判断能力は守備面でも生かされ、相手のパスコースやボールの置き所を予測し、果敢にインターセプトも狙う。176cmと決して大柄ではないが球際は激しく、素早いフィジカルコンタクトによってボールを奪取する姿は、チームに落ち着きを与えてきた。
これだけの能力を持っている選手をプロのスカウトが放っておくはずがない。J1のスカウトは早くから徳永をリストアップしており、実際にJ2の3クラブから熱烈なオファーが届いた。
だが、徳永は早くから筑波大学への進学を希望していた。