“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
大迫塁と福田師王…神村学園の“超高校級コンビ”が過ごした濃密な6年「また一緒にやりたければ代表に入ればいい」〈選手権Vならず〉
posted2023/01/08 11:10
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
L:Kiichi Matsumoto/R:AFLO SPORT
高校最後の選手権は、ベスト4で幕を閉じた。
今大会No.1のストライカーであり、卒業後はブンデスリーガの名門・ボルシアMGへの加入が決まっているFW福田師王。そして、精度の高い両足のキックと視野の広さで世代屈指のゲームメーカーであるJ1セレッソ大阪内定のMF大迫塁。2人は神村学園中等部時代から6年にわたって強烈なホットラインとして築き上げてきた。
有村圭一郎監督が「(高校進学時は)多くのJクラブユースが2人を狙っていたから気が気じゃなかった」と振り返るほどの才能は高校サッカーでさらに磨きがかかり、Jクラブ、そして海外クラブの目利きたちの間で早くから争奪戦が繰り広げられた。
脅威となった福田と大迫の連係
そんな最注目コンビは、選手権の舞台でも前評判通りの実力を遺憾なく発揮していく。
初戦の山梨学院戦では、0-1で迎えた36分に大迫のインターセプトからのクロスを福田が中央で受けて反転。相手に引っ掛かったボールをMF笠置潤(3年)が押し込んで同点ゴールをもたらすと、直後の38分には大迫の縦パスを受けた福田が鋭い反転から一気にゴール前までドリブルで運び、左足の一撃で逆転ゴールを決めた。
前回王者の青森山田と対戦した準々決勝でも、大迫の自陣からのロングフィードを福田が高い打点のヘッドでFW西丸道人(みんと/2年)に正確に落として同点弾を演出。60分には自陣で大迫が抜群のキープ力を発揮して青森山田の猛攻を掻い潜る縦パスを送り込むと、そこから神村学園のカウンターが発動。最後は西丸のシュートがDFに当たったこぼれに福田が反応して決勝弾を突き刺した。
こうして迎えた準決勝、岡山学芸館戦。乱打戦となったこの試合でも、2人の存在感が光った。
開始早々に先制を許した神村学園だったが、笠置のインターセプトのこぼれに反応した大迫がワンタッチでターンして、福田にクサビのパス。福田からダイレクトの落としを受けた1年生MF金城蓮央がペナルティーエリア外からシュートを放つと、GKが弾いた瞬間、誰よりも先に動き出した福田が反応し、こぼれ球を右アウトサイドで同点弾を流し込んだ。すると今度は、大迫の左足が魅せる。1-1の同点で迎えた59分、右FKを相手の壁にあたりながらも、直接ゴールに叩き込んで逆転に成功した。
その直後、一瞬の隙をつかれて同点に追いつかれるも、69分には右CKから大迫の正確な左足のキックが中央のDF中江小次郎の頭にドンピシャリ。強烈ヘッドが突き刺さって3-2。決勝進出が見えてきたかと思われた束の間、またしても岡山学芸館のFW岡本温叶(はると/3年)にスーパーゴールを決められ再び同点に。シーソーゲームはPK戦までもつれこんだ。
後攻・神村学園は1人目を務めた大迫が成功したものの、2人目の西丸がポストに当ててしまうと、続く3人目のキッカーを務めた福田が岡山学芸館GK平塚仁(2年)にセーブされて万事休す。
2006年度大会以来のベスト4進出を果たした神村学園だったが、高校年代屈指のタレントを揃えながらも、サッカー部史上初の決勝進出という歴史を塗り替えることができなかった。