“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
大迫塁と福田師王…神村学園の“超高校級コンビ”が過ごした濃密な6年「また一緒にやりたければ代表に入ればいい」〈選手権Vならず〉
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byL:Kiichi Matsumoto/R:AFLO SPORT
posted2023/01/08 11:10
神村学園のMF大迫塁とFW福田師王(ともに3年)。惜しくも決勝進出は逃したが、超高校級コンビとして大会の主役になった
「塁がいなかったら僕はサッカーに対して本気になっていなかったかもしれない」
昨年、大迫について福田に聞くとこう語った。今でこそ「高卒→ドイツ行き」という肩書きが目立ったことで注目を浴びる存在になった福田だが、中学途中までは大迫の影に隠れる存在だった。
大迫は中2時にU-14エリートプログラムに選ばれ、中3でU-15日本代表、高1でU-16日本代表の主軸として活躍し、常に世代を牽引する選手だった。福田も中3の2月にU-17日本代表に追加招集されて初の年代別代表を経験したが、大迫は常に先を行く存在だった。
「塁のような選手がプロに行くのであって、自分がプロに進みたいなんて考えたこともありませんでした。特に中学2年の頃は怪我も多くて、『自分にはプロは無理だから、サッカーを楽しもう』と思っていました」
だが、福田の心境はだんだんと変化していく。
「塁と肩を並べる存在になりたい」
「自分が点を取ったら、みんなが笑顔になるし、何より塁がすごく喜んでくれる。それが嬉しかったし、一番上手いはずの塁が努力を重ねている姿を見て、『俺はこんな軽い気持ちでサッカーをしていていいのか』と思うようになった」
大迫が代表活動から帰ってくる度に、精神的にも技術的にも成長している姿を見せつけられた。そして仲間を大切にしながら、真剣にサッカーに打ち込む大迫を目の当たりにしたことで、いつしか「塁と肩を並べる存在になりたい」という思いが強くなっていった。
さらに大迫を視察に訪れた関係者が多くいたことも福田のモチベーションを上げる要因となったことで、中3の頃には「プロを目指すことを決めました」と口にするようになった。
一方、福田の急成長ぶりに“脅威”を感じていたのが大迫だった。
「どんどん成長しているのが分かったし、師王のおかげで勝つ試合が増えた。『大迫はすごいと周りから言われるけど、俺ってどこがすごいのか。師王の方がすごいんじゃないか』と思うようになりました」
ストライカーとして成長を続ける相棒の存在は頼もしい。しかし、心の奥底には強烈な危機感を湧き上がっていた。それが一気に表面化をしたのが高校2年、2021年5月のことだった。