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「羽生結弦選手が手をつける前を狙っていた」“伝説の表紙”を撮ったカメラマンが語る“あの瞬間”「アップにしても“絵になる”存在なんです」

posted2022/12/30 11:30

 
「羽生結弦選手が手をつける前を狙っていた」“伝説の表紙”を撮ったカメラマンが語る“あの瞬間”「アップにしても“絵になる”存在なんです」<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

スポーツ総合誌『Number』の表紙人気投票でも他のフィギュアスケート特集の表紙をおさえ、1位に推された“伝説の1枚”。この1枚を撮るまでの話を聞いた

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NumberWeb編集部

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Tsutomu Takasu

 今年7月、プロ転向を宣言し、競技生活に終止符を打った羽生結弦。2月の北京五輪では4回転アクセルに挑戦、プロ転向後も単独でのアイスショーを開催し注目を集め、年末のNHK『紅白歌合戦』で審査員となるなど、2022年を代表する1人となった。

 そんな今年を象徴するアスリート・羽生結弦を10年以上撮影してきたスポーツカメラマン・高須力が明かす、雑誌『Number』の表紙を飾った「あの瞬間」と「“あの会見”から感じ取ったこと」とは――。(全2回の後編/前回は前編へ)

高須が注目した『オペラ座の怪人』のある場面

 羽生をシーズン最初から追いかけた2014-2015シーズン。ソチ五輪金メダリストの羽生は中国杯で練習中に他の選手と衝突し、ケガを負いながらフリーに強行出場、NHK杯では4位もGPファイナルで優勝、全日本選手権も3連覇を達成とV字回復を遂げた。劇的な歩みを目の当たりにした高須はその後も撮影を続け、2015年3月の世界選手権にも足を運んだ。

「世界選手権は2011年から撮り続けていました。ただ、五輪後のシーズンで海外の開催ですし、移動にコストがかかる分、行くかどうか迷っていたんです。でも、羽生選手を追っていく中でその迷いは消えて、中国杯と同じ上海の会場に行くことを決めました」

 会場に向かう前、高須は自身が撮影してきたこのシーズンの羽生の写真を見返した。

 どのような写真を世界選手権では撮ろうか。目に留まったのはフリー『オペラ座の怪人』のある場面だった。

「この世界選手権までに羽生選手が出場した4つの大会で既に4回の『オペラ座の怪人』を撮っているわけです。なので、『このポジションでも撮っているし、こういう撮り方もしているし……』と思いつく限りの撮り方で撮りきっていた状態でした。
 ラストのスピンの後に顔に手を当てる瞬間、このポーズがこのプログラムならではの振り付けで印象的なシーンだと思っていて。過去の写真を見ていくと、手をつけてからの写真はあったのですが、手をつける前の写真がなかった。だから、「世界選手権は手がつく前とかいいかもな、顔も見えるし」と気づいたんです。
 自分は2、3枚の連写はしますけど、『バシャバシャバシャー』という連写はしません。ずっと連写していれば、“写真は撮れる”けど、思考停止になってしまうし、フリーのフォトグラファーとして意思を持って撮っていたいという思いがあるから、考えのない連写はしないようにしています。今まで自分は『オペラ座の怪人』の手を当てた瞬間を意識していた分、『手をつける前』は撮っていなかった。新聞などでもみんな手をつけている写真が使われていて。だから世界選手権ではスピンを終え、少し体を捻って手をつけようとするところを狙おうと撮影に臨みました」

ちょっと斜にした方が人間ってカッコいいことが多い

 3月28日、中国杯と同じく会場は中国オリエンタルスポーツセンター。高須はジャッジ席の右側後方の席に陣取った。少し上からの角度、俯瞰する位置からの撮影を高須は好む。その理由をこう語る。

【次ページ】 構図としては狙い通りに撮ることはできました。ただ…

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