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「羽生結弦選手が手をつける前を狙っていた」“伝説の表紙”を撮ったカメラマンが語る“あの瞬間”「アップにしても“絵になる”存在なんです」 

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photograph byTsutomu Takasu

posted2022/12/30 11:30

「羽生結弦選手が手をつける前を狙っていた」“伝説の表紙”を撮ったカメラマンが語る“あの瞬間”「アップにしても“絵になる”存在なんです」<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

スポーツ総合誌『Number』の表紙人気投票でも他のフィギュアスケート特集の表紙をおさえ、1位に推された“伝説の1枚”。この1枚を撮るまでの話を聞いた

「真正面がいい時もあるんだけど、真正面じゃなくてちょっと斜(はす)にした方が人間ってカッコいいことが多いという感覚があります。人間をカッコよく撮るんだったらっていうので、ちょっと斜めで。斜めの方が奥行きが出しやすいっていうのもあって。奥行きがあると、写真としてもいいんですよね」

 曲が始まってから4分30秒。高須は羽生の演技を追いながら、その時を待つ。スピンを終え、両手が顔に近づくその刹那、シャッターを切る。撮ったときの感触はどのようなものだったのか。

構図としては狙い通りに撮ることはできました。ただ…

「構図としては狙い通りに撮ることはできました。ただ、僕が個人的に好きな鋭い目つきのギラギラした羽生選手というより、『オペラ座の怪人』の悲哀の部分が強く出て、迫力のある写真とはならなかったという印象で。横位置(横長)の写真だったのもあり、実際の写真を見て、少し間延びしているか? なんて思いながら、でも、自分の中で考えて撮った写真だからな、と『Number』の編集部に写真を送りました」

 スポーツ総合誌『Number』の編集部では4月2日の発売に向け、急ピッチで羽生結弦が表紙のフィギュアスケート号を製作していた。号のタイトルは「羽生結弦 不屈の魂」。表紙の写真は、これから仮面に手をつける瞬間をとらえた高須の写真を縦長にトリミングしたものに決まった。

「表紙となった自分の写真を見て、びっくりしました。自分が見た横位置の写真とは印象が全く違うし、タイトルの文字も載っかって、この表紙めちゃくちゃカッコいいなと思いました。この写真を選んだ編集者とタイトルを入れて表紙をデザインしたデザイナーさんの力があったからこそ出来上がったものだと思っていて、とても印象深い1枚です」

 改めて表紙を見ながら、高須はこう語る。

「この写真を見ると『これから手をつけるな』とかいろいろなことが考えられますよね。見る人に想像できる“余白”が与えられる写真にはなったのかなと思っています」

 羽生選手が演技をしているという記録的な写真ではなく、見て考えられる1枚。「フリーランスは他の人と同じことをやっていてもしょうがない」と独自性を重んじる高須がとらえたこの1枚は、『Number』のフィギュアスケート特集号の表紙人気投票(2019年11月実施)で他の候補20点以上を抑えて圧倒的1位となった。

高須が羽生の記者会見の撮影に持ち込んだ“ある構図”

 高須がこの写真と同じように、記録的な写真の構図から抜け出し、得意としているのが記者会見の撮影だ。

【次ページ】 後になって気付いた「会見での感極まった様子」の意味

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