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フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
「羽生結弦選手が手をつける前を狙っていた」“伝説の表紙”を撮ったカメラマンが語る“あの瞬間”「アップにしても“絵になる”存在なんです」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTsutomu Takasu
posted2022/12/30 11:30
スポーツ総合誌『Number』の表紙人気投票でも他のフィギュアスケート特集の表紙をおさえ、1位に推された“伝説の1枚”。この1枚を撮るまでの話を聞いた
「もともとサッカー日本代表の監督会見で、アップの写真を撮るということはやっていました。会見の机のすぐ前まで行って、400mmの望遠レンズで撮るんです。フィギュアでも試してみて、わかったのは、羽生選手はアップにしても『絵になる』。そういう存在でした」
さまざまな表情を見せてきた会見の中で高須にとって印象深いのが2019年、宇野昌磨に敗れ2位となった全日本選手権での1枚だ。思い詰めた表情で天に視線を移した瞬間、その眼が潤んでいるように見える。高須は撮りながら、どのようなことを考えていたのか。
「敗れはしたのですが、不思議な表情をしているなと思いました。悔しいようで、どこか嬉しさも感じているような……。2大会連続で五輪の金メダルを獲得し、トップを走ってきた彼が日本国内で宇野選手に追い抜かれたことで、自分自身もプレッシャーから解放されたような、どこか嬉しく思っているゆえの表情なのかなと個人的には思いました。
この頃、宇野選手が『やっぱ勝ちたい』『タイトルを取りたい』というのをしっかり明言するようになって、その言葉を『羽生結弦』を超えて実現したことが嬉しくて、感極まっていたのかなと思っていたんです」
後になって気付いた「会見での感極まった様子」の意味
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ただ、取材者の中には、この表情を「やはりよほど悔しかったのでは?」と見る向きもあった。
「僕はそうは思ってなかったんですけど。でも、羽生選手がその翌年の2月にプログラムを『SEIMEI』に変更しますというニュースを聞いた時には、『ああ、よっぽど勝ちたかったんだな』と思いました。考えてみたら、負けたのが悔しいと思うのは当たり前だし、むしろ僕は『羽生結弦はやっぱそうじゃなきゃダメだな、それでこそ羽生結弦でしょう』とも思ったんです」
高須が読み取った羽生の勝利への執念。その変わらない情熱に、高須は惹きつけられ、カメラを構え続けた。
「オリンピックで2度の金メダル、そして主要な国際大会をすべて制す“スーパースラム”を達成した羽生選手は、傍から見ると、『これ以上何を目指すんだろう』と思ったりするわけです。喉から手が出るほど欲しいタイトルがあったわけではおそらくない。だからこそ、4回転半、クワッドアクセルを認定させる、ということに目標を置いていたのかなと思います」
前人未到の4回転アクセル。北京五輪で初めて認定され、今年9月に17歳のイリア・マリニンが成功させた大技だ。その高難度の技に挑戦し続けた意味を、他のスポーツも撮影する高須はこう考えている。