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「羽生結弦は“羽生結弦”を演じている」“流血の中国杯”を目の前で撮影したカメラマンが語る“羽生劇場”「ドラマよりすごいことが起きている」 

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photograph byTsutomu Takasu

posted2022/12/30 11:29

「羽生結弦は“羽生結弦”を演じている」“流血の中国杯”を目の前で撮影したカメラマンが語る“羽生劇場”「ドラマよりすごいことが起きている」<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

演技直前の6分間練習で他の選手と激突しケガを負うも、包帯とテーピングをして強行出場した羽生。その瞬間を目の前で見たカメラマンは…

羽生結弦は羽生結弦を演じている

「僕は『羽生結弦は羽生結弦を演じている』と思っているんです。例えば、どんな困難でも自分が定めた目標やたどり着くべき領域を目指すのが『羽生結弦』というキャラクターだとすれば、それを羽生選手は演じている。そういった『役』を演じ続けているんだな、というのは撮影を続けながらずっと思っていました」

 サッカーを“主戦場”とする高須にとって、羽生の撮影とは、どのような経験となったのだろうか?

「サッカーの撮影現場だと、ピッチが広くカメラマンも多い印象ですが、フィギュアは撮影スポットも限られ、少数精鋭の印象です。言うまでもありませんが、羽生選手には注目も集まっていますし、その中でいい写真が撮れるか、写真を使ってもらえるかという緊張感のある勝負をしている感覚でした。なんとなくカメラマンのみなさん、顔と名前も分かるので、負けたら『うわー、あの人にやられたな』となるし、勝つと、もちろん嬉しかったですね。
 その中で、フリーランスというのは、他の人が撮っていないところを上手く撮って、『こういう写真がありますよ』と編集者や読者の方に対して提案するものだと思っています。そもそも僕はカメラマンとして人と違うものを出さなきゃっていう思いがあるので。例えばビールマンスピンとかは足を上げて伸び切ったところが一番の“撮りどころ”で、みなさんそこを撮るけど、僕なら逆にその伸び切るちょっと前とか、終わった後にちょっと手を離す瞬間とかを撮るのが好きなんです。ひねくれているだけですけど(笑)。歌舞伎で言う『見得』みたいな決めポーズと言える“撮りどころ”が各プログラムにあるものですが、その決めポーズを普通にとらえても同じ写真になってしまうので、少し角度やタイミングを変えて、他の人が撮っていない1枚を撮ろうと心がけているかもしれないですね」

 そう心がけて、結実したのが2015年3月の世界選手権フリープログラム『オペラ座の怪人』の1枚だ。

 スポーツ総合誌『Number』(文藝春秋刊)の表紙の中でも圧倒的人気を誇り、激動の2014-2015シーズンのフィナーレをとらえたこの1枚はどのように撮られたのか――。後編ではこのショットについて話を聞いた。

<後編に続く>

#2に続く
「羽生結弦選手が手をつける前を狙っていた」“伝説の表紙”を撮ったカメラマンが語る“あの瞬間”「アップにしても“絵になる”存在なんです」

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