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全日本フィギュアで高橋大輔が見せた”ダンサーとしての進化”と村元哉中との”戦友みたいな関係性”「2人は成長のプロセスを愛している」
posted2022/12/30 11:02
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
2022年の全日本選手権で初優勝を遂げた、村元哉中&高橋大輔組は、喜びと悔しさを胸に、肩を強く抱き合った。アイスダンスを組んで3年。2人から見えたのは、高橋のダンサーとしての進化、そしてお互いを支える関係性の深化だった。
初日のリズムダンスは、ラテンに乗ってキレ味あるダンスを披露するナンバー。公式練習でも朝の練習でも、2人は充実した面持ちで、滑ることそのものを楽しんでいるのが伝わってきた。
「会場入りしてから『すごく良い感じだなあ』って思っていました」(村元)
「本当にリズムに乗ってるなという気持ちがあって、バシッと決まるとめちゃくちゃ気持ちよくって!」(高橋)
「僕すごい、もう前のめりでした」(高橋)
2人はむしろ「練習が良すぎた」とも振り返る。本番直前、氷に降りると高橋の様子がいつもと違った。マリーナ・ズエワコーチが「アイスショーだと思って緊張せずにやってきなさい」と声をかけたが、高橋には聞こえていない。
「(ズエワの言葉を)あんまり聞けてなくて、僕すごい、もう前のめりでした。ちょっと鼻息が荒かったです」
村元も高橋の表情を見て、この舞台に掛ける思いの強さを受け止めた。
「練習のときはすごく柔らかい表情だったんですけど、本番前は緊張してるんだろうなって顔で。周りが見えてない感じ。ゾーンに入ってたのかな?」(村元)
それぞれの心を表情から読み取りあいながら、スタート。傍目には十分なスピード感とリズミカルさがあったが、2人は最後まで緊張感が抜けなかったという。
「ちょっと動きが硬かった」(村元)
「いつものバシッという感じがなかった」(高橋)
そう感じていた2人は、最後のローテーショナルリフトで規定の7秒を超えてしまい、マイナス1点となった。演技を終えて、まずまずといった表情でハグ。77.70点での首位スタートだった。
村元が自分を責めると、高橋がマイクを引き寄せ…
リフトの減点について記者に聞かれると、村元は自分のミスだといった様子でマイクを取り、説明を始めた。
「私がポジションを切り替えるときに上手くいかなくて、最後に私が脚を下ろすまでに長引いたので、7秒を超えてしまったと思います。スケートアメリカでも一度減点があったのですが、リフトの減点というのは……」
村元が自分を責めるような様子になった瞬間、高橋がマイクを引き寄せて、続ける。