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フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
「羽生結弦は“羽生結弦”を演じている」“流血の中国杯”を目の前で撮影したカメラマンが語る“羽生劇場”「ドラマよりすごいことが起きている」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTsutomu Takasu
posted2022/12/30 11:29
演技直前の6分間練習で他の選手と激突しケガを負うも、包帯とテーピングをして強行出場した羽生。その瞬間を目の前で見たカメラマンは…
「すごい“劇場”だなと感じた」2014-2015シーズン
だが予想に反し、羽生は頭に包帯を巻き、顎にテーピングをした状態でリンクに姿を現し、フリーの演技を完遂する。
「正直『そんなことあるの?』と、目の前の光景が信じられませんでした。劇的な展開というか『ドラマよりすごいことが起きている』と感じましたし、演技をやり通す姿にただただ『すごいな』と」
羽生は中国杯を2位で終え、NHK杯では4位。GPファイナルに最下位の6位で滑り込み、出場を果たすと前年に続く2連覇を達成。GPシリーズの最後には頂点に立ってみせた。
一番ショット数が多い選手は間違いなく、羽生結弦選手
「このV字回復が、すごい“劇場”だなと感じたんですよね。もともと五輪金メダリストとして臨んだシーズン、その1年も試練のような壁に直面して、それを乗り越えて、また壁が出てきて……というように、右肩上がりとは言えない時期に差し掛かっている印象でした。
ずっと右肩上がりの選手というのは、みんなが撮りに行くものです。でも、やっぱり他人(ひと)と同じ写真じゃ面白くないという感覚が僕自身あって。しかも僕からすると、上り調子の人間が1回落ちた時、その落ちたところからどう這い上がってくるのかが見たい。そこからのほうがむしろ人間として興味がある。このシーズンの羽生選手も世界選手権(2015年)では銀メダルと頂点に届かなかった。絶対王者的な表現をされる選手ですけど、意外と勝てないことも多く、逆にそういった勝てない部分も含め、惹きつけられていったのかなと思います」
以降、高須は白氷の舞台に立つ羽生結弦をそのカメラで捉え続けた。
「自分の人生の中で、一番ショット数が多い選手は間違いなく、羽生結弦選手です。カメラ席から練習などを見ていても羽生選手のことはついつい“見ちゃう”。それは表情がすごい豊かだから。どんな表情を見せるのか、目が離せなかったです」
その一挙手一投足をさまざまなレンズを通して見てきて、気づいたことがある。