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《リーグ3連覇の栄光再び》世代交代に意識改革…広島・新井監督は未解決の難題をどう解決する?「カープの伝統は…」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/02 11:02
新入団選手記者会見で、新人に囲まれてポーズを取る新井監督。この中から世代交代を担う人材は現れるか?
従来からの課題だった「ポスト會澤(翼)」に加え、昨年発生した「ポスト鈴木(誠也)」という課題の解決も先延ばしのままだ。前者は2022年に主に三塁手として全試合出場した坂倉将吾を捕手に専念させることで解消しようとしている。2021年にはリーグ2位の打率を残し、2年続けて広島打線の大きな得点源となっているだけに、スタメンから外れる際の攻撃面での影響は少なくない。だが、大局的なチームづくりを図る上では、避けては通れない道なのかもしれない。
後者は後継者の見当がつかないだけに、より難題といえる。昨季の打線はリーグ2位の得点力を誇ったが、外国人選手を除けば功打者ぞろい。個々の打力でつなぎの野球を実践した実力者がそろうだけに、4番候補でも荒削りな選手が割って入るのは容易ではない。
2021年に一軍で2桁本塁打を記録して大砲候補と期待された林晃汰も、昨年は1度も一軍の打席に立つチャンスを与えられなかった。
選手育成には一定の我慢も必要となる。昨季終了後に育成選手から支配下選手登録された二俣翔一、昨秋ドラフト2位で獲得した内田湘大(利根商高)という若手をどう育成していくのか注目される。
目の前の勝利のために
ただ就任1年目だからといって、育成のみに重きを置くわけではない。
「若手の底上げ、力をつけさせることは大切ですが、長いシーズンでは若手、中堅、ベテラン、外国人選手のバランスも大切。3連覇のときはそういった絶妙なバランスがチーム力となっていた。戦力だけでなく、1年単位でもシーズンの序盤、中盤、後半を念頭に置きながら、投手起用や采配をやっていきたい」
あくまで結果優先。目の前の試合にすべてを注ぎながら、大局を見ていく。
「機動力の復活」も重要なファクターだ。昨季の26盗塁は球団史上最少だった。盗塁企図数55もリーグワースト。成功率は.473と、12球団で唯一5割を下回った。必要なのは目に見える数字の増加ではなく、走塁意識の向上にある。
昨季はシーズン途中から選手が状況に応じて自由にスタートを切れる“グリーンライト”がなくなり、ベンチからのサインでしかスタートを切れなくなった。サインの頻度の低さも重なって、選手の意識が低下したように思われた。