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お正月もテレビで大活躍なのに…杉谷拳士が“芸能界”ではなく“社長”に転身する理由とは?「LINEはないやろ」中田翔センパイへの弁明も
posted2023/01/02 11:03
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Shigeki Yamamoto
――まずは現役生活、お疲れ様でした。「引退」ではなく「前進」を発表してから、少し時間が経ちました。今の心境は?
杉谷拳士 朝起きた時にひじ・肩・腰をチェックしなくていい事実に寂しさも感じていますが(笑)、新しい仕事も始まっていますし、毎日ワクワクした気持ちで過ごしています。
――表情が穏やかになりましたね。
杉谷 最近は「充実フェイスだね」と言われます(笑)。
――改めて、ユニフォームを脱ぐことを決めた時の心境についても教えてください。
杉谷 札幌ドームの最終戦に両親を呼んだんです。「(札幌ドームの)最後でもあるし、来なよ」と言ったら、両親は「あんた、そんなこと言う子とちゃうやん」と驚いていて。そこで、あとどれくらいやるかわからないとか、思っていたことを話しました。
――そのときはまだ引退することは決めていなかった?
杉谷 決めていませんでした。ただ、将来の進む方向性を初めて両親に話すことができたので、少しスッキリしました。そこから1、2週間ぐらい経って、吉村(浩/前GM)さんや稲葉(篤紀/現GM)さん、栗山(英樹)さん、(斎藤)佑樹さん……いろんな方にお話しする機会を設けて頂きました。
「新球場でプレーしている自分よりも…」
――決め手になったことは?
杉谷 9月あたりに新球場(エスコンフィールドHOKKAIDO)を見に行ったのですが、観客席がすごく近くて素敵だなあと思う反面、こんなに球場が狭いなら戦術が変わってくるだろうなと、ふと思ったんです。グラウンドでプレーしている自分よりも、外から見ている自分のほうがイメージできたというか……。自分の中で「あっ、こんな中途半端な気持ちじゃダメだな」と思いました。あとは、やっぱり栗山さんの言葉でしたね。昔から言われていたことが頭の中から離れませんでした。
――どんな言葉ですか?
杉谷 「拳士は拳士らしく、前に進むんでしょ」と。その前に進む、「前進」ということですよね。僕の野球人生の中で一番大きい言葉だなと思って。
――だから「前進」すると。監督就任の頃からよく言われていた言葉なんでしょうか。
杉谷 そうですね。やっぱり僕みたいな性格の選手を見ると、中には「あいつ、うるさいよ」と思う方もたくさんいたと思います(笑)。でも栗山さんは「杉谷拳士は杉谷拳士らしく前に進んだら、最後、終わるときに全員がおまえのこと認めてくれるから」と言い続けて下さいました。
この言葉を大切に自分らしさを貫いていたら、最後にあんな胴上げをしてもらえました。人生の中でも一生の宝物になるようなシーン。栗山さんの言葉を信じてよかったです。