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三笘薫の「1mmアシスト」に反応…田中碧はなぜ救世主になれた? 信頼するトレーナーと目指した“地味なことを正しく100回できる身体” 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2022/12/05 11:02

三笘薫の「1mmアシスト」に反応…田中碧はなぜ救世主になれた? 信頼するトレーナーと目指した“地味なことを正しく100回できる身体”<Number Web> photograph by Getty Images

スペイン戦で逆転ゴールを決めた田中碧。20年からケアを依頼する木下トレーナーに「次は僕がやるよ」と宣言して試合に臨んでいた

 実際に身体を診ていくと、すぐに欠点に気づいた。

「股関節、肩関節、頚椎、胸椎、足首の可動域の狭さが気になりました。この5箇所は、骨の特徴から動かす方向が決まっていて、それぞれを正しい方向にしっかりと動かさないと怪我の要因になります。決して悪い状態ではなかったのですが、より上を目指すのならばこれらの可動域を広げ、動き方を解剖学的に教える必要があると判断しました」

 さらに可動域の狭さはスムーズな身体操作の妨げになり、俊敏性はもちろんボールコントロールやキックなど、プレーの成長を妨げる可能性もあった。

「股関節や肩関節は球関節なので、いろいろな角度に動かせます。頚椎と胸椎は脊髄の中で回旋運動に重要な役割を担います。足首は曲げる・伸ばす以外にも内返し・外返しができるので、ある程度動きます。この5箇所を有効活用すれば、よりプレーの幅が広がると思いました」

地味なことをコツコツとできる才能

 田中を診ていく過程で、木下はある確信を得ていく。

「もともと怪我が少ない選手だったので、それだけでも大きな価値があるのですが、彼にはコツコツと物事を積み上げられる才能を感じました。地味なことをひたむきに続けることができると言いますか。単調な動きでもそれぞれの関節の正しい動きを繰り返せることは、正しく筋肉を使うことにつながり、筋肉をバランスよく鍛えられます。かつ正しい姿勢と使い方で100回繰り返すことができれば、それだけ情報を司る小脳に記憶され、いざ実戦になった時にとっさに力を発揮しやすくなる。トレーナー視点からしても碧くんの姿勢には大きな伸び代を感じました」

 端整な顔立ちと飄々とした性格とは裏腹に、田中はストイックな求道者タイプだ。食事面でもテニスの世界的名手であるジョコビッチが取り入れたことで有名なグルテンフリーを取り入れ、鶏肉・牛肉・豚肉を食さずに魚でタンパク質を補うなど、生活の全てをサッカー選手としての成長に捧げていた。

 ふとした時、木下は“なぜそこまでストイックにやり続けられるのか”と聞いたことがある。田中はこう答えた。

『今、自分がやっていることが仮に効果はなかったとしても、それはそれで構わない。でも、その後に結果が出たとして、誰かが『田中碧もやっている』と取り入れたとするじゃないですか。その選手は僕より後から取り入れているので、僕には追いつけないでしょ。要するに後発の選手たちに負けることはないと思うんです』

【次ページ】 “満足しない姿勢”と“抜群の吸収力”

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