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三笘薫の「1mmアシスト」に反応…田中碧はなぜ救世主になれた? 信頼するトレーナーと目指した“地味なことを正しく100回できる身体”
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2022/12/05 11:02
スペイン戦で逆転ゴールを決めた田中碧。20年からケアを依頼する木下トレーナーに「次は僕がやるよ」と宣言して試合に臨んでいた
迎えたW杯。カタールへ旅立つ頃か、木下のもとに田中から連絡が入った。それは“身体”のことではなかった。
『これまで自分に注目をしてくれなかった、見てくれなかった人たちに自分を見てもらえるチャンス。僕はずっとW杯にかけてやってきましたから。それに初戦はドイツだし、スペインとまでやれる。これはチャンスでしかない。勝つよ、俺必ずやるから』
昨シーズン、チームは1部昇格を果たせず、レベルの高いリーグへの個人移籍も叶わなかった。だからこそ、W杯を“アピールする場”として捉えているのだろう。近くで支えてくれた木下に感謝を込めて、決意表明したのだ。
アップセットとなったドイツ戦ではスタメン出場だったが、個人としてはゴールに絡めずに71分に交代。続くコスタリカ戦では出場がなかった。試合後に再び木下にメッセージが届いた。
『ここからよ。次は僕がやるよ』
そしてスペイン戦。まさに有言実行の決勝弾を叩き込み、日本の16強入りに大きく貢献した。
「三笘選手の折り返しから、碧くんが飛び込んだシーンを見て『あそこにいるか』と驚きました。初戦は自分の良さを出す前に代えられてしまいましたが、あの日もずっと守備に追われて同じ流れだったと思う。でも、彼はずっと狙っていましたね(笑)。碧くんの良さは負けん気の強さとゴールまでの逆算を常にしていること。いつも自分にとって何が必要かを理解しながらやっている。だから、結果がついてくるのだと思います」
この活躍は田中にとっては通過点の1つに過ぎない。ヒーローになった直後、三度、木下にこう宣言した。
『これからよ、やるよ! まかせろ!』
地道に自信を積み重ねてきた。ベスト8入りが懸かったクロアチア戦でも、いつも通りのスタンスで準備を始めているはずだ。
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