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「ドイツには“エンドウ”がいなかった」失意の強国ドイツで始まった“妥協なき敗因分析”「反骨精神が必要?」「FIFAへの抗議は…」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2022/12/04 17:02
2014年W杯優勝国ながら、前回大会に続き2大会連続のグループステージ敗退となったドイツ。代表をめぐる“11人”の意見を聞いていくと…
日本戦前にドイツ代表キャプテンのマヌエル・ノイアーがカタールにおける人権問題を受けて、レインボーカラーのキャプテンマークをつけようとしていた。開催に向けた工事で数多くの移民労働者が命を落とした問題、LGBTQ(性的少数者)への差別、女性への権利侵害改善を願い、多様性をアピールするキャンペーン。ドイツだけではなくイングランドやデンマークなど欧州の複数国が団結して行おうとしていたが、FIFAは許可せず。他国はこの決定に従い、別の機会や形での抗議やキャンペーンを検討し始めたが、ドイツは真っ向からFIFAにぶつかろうとした。やるかやらないかの議論ではなく、やることを前提としたうえで、どのような形でメッセージを送るかの議論になってしまった。
人権に関する問題は間違いなく大事なテーマだし、こうした世界中が注目する大会だからこそ伝えられるメッセージもある。押し付けではなく、他国がもつ伝統的な文化や習慣をリスペクトしながら、よりよい世界、よりよい未来のためのやり方を模索する――。他人事ではなく、いろんな人に考えてほしい――。そのために選手が自主的にメッセージを送りたいという姿勢はとても評価されるものだろう。
やり方とタイミングは正しかったのか?
ただ、タイミングとやり方については考慮されるべきだったのかもしれない。そしてそのために防波堤となるべきドイツサッカー協会が流れを止めるどころか促進したようになった点が批判を浴びるポイントとなっている。
コスタリカ戦後にテレビインタビューを受けた代表マネージャーのオリバー・ビアホフは女性キャスターのエスター・セドラツクから「選手全員が試合前にメッセージを出すことにオッケーだったわけではないと聞いています」と追及され、続けて厳しい指摘を受けた。
セドラツク「もっと別のやり方があったのではないでしょうか? 選手のプレッシャーを取り除くやり方はなかったのか?」
ビアホフ「それには同意するしかない。もっといいやり方をすることができただろう。自分達が望んでいたようにはいかなかった。ただそれが3試合に決定的に影響を及ぼしたのかどうかは別のテーマだと思う」
ビアホフが「日本戦の70分間、スペイン戦のプレーはどれも素晴らしかった」と主張するように、そうしたアクションをしたために負けたというのは早計かもしれないが、より試合に集中して臨むための準備をすることができたというのは確かである。
バラック「自分達のサッカーを自問自答しなければならない」
ではプレー面ではどうだろう。日本戦での《20分間の悲劇》はなぜ起きてしまったのか。コスタリカ戦も最終的に4-2で勝利したとはいえ、一時逆転を許してしまっている。そして多くのドイツファンにとってそれは「まさか」ではなく、「やっぱり」の出来事だった。大会前から守備の不安定さ、1試合を通してゲームをコントロールできないことは常に問題視されていた。それに対する対策が十分感じられないまま大会に入っていたので、日本戦であれほど攻め込みながら2点目がなかなか入らない試合展開は、とても安心して見ていられるものではなかった。