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「一番いい相手は“イケバナ”だ…」会見でスベったクロアチア指揮官ダリッチに油断はあるか? 日本を熟知した“影のキーマン”とは
posted2022/12/04 17:01
text by
長束恭行Yasuyuki Nagatsuka
photograph by
Getty Images
第2戦のカナダに4-1で快勝した翌日の11月28日。記者会見に出席したクロアチア代表監督のズラトコ・ダリッチは、開始から18分が経過した最後の質問で少し緊張感が切れてしまったようだ。「(決勝トーナメント1回戦の相手は)どこが一番のお気に入り? スペイン? ドイツ? やっぱり日本?」という気の早い記者の質問に対し、少し間を置いてこう答えた。
「一番はイケバナだ。……(4秒の沈黙のあと)日本人だ」
ちょっとしたジョークのつもりだろうが(会場ではあまりウケていなかった)、これまで「謙虚さ」をモットーにしてきた指揮官にしては軽率だったかもしれない。クロアチア語を熟知した私が“墓掘り人”のように発見し、それを文章にし、アクセスを稼ぐべく記事の見出しにもなってしまうわけだから。そして最後には相手国、つまり日本の“燃料”となる。
「クロアチアは日本を舐めているか?」「否!」
クロアチアがベルギーと引き分けてグループFを2位で突破した12月1日、日本は世界を驚かせるスペイン撃破でグループEを1位で突破。それによりダリッチ監督の願いは見事に叶い、「ジャックポットだ!」と囃し立てる国内メディアも現れた。しかし、日本対スペインの中継が終わった直後、スタジオゲストのアントン・サモボイスカは、今のクロアチアの代表チームは日本を決して過小評価していないと主張した。彼はイビチャ・オシムとも親交が深かった「歩く百科事典」ともいうべき重鎮ジャーナリストだ。
「多くのクロアチア人は日本を“甘いデザート”のように考えているだろう。しかしながら、私は100%断言する。今のクロアチア代表はスペインが相手になるよりも、日本が相手となるその試合に2倍は真剣に臨むはずだ」
「クロアチアは日本を舐めているか?」と尋ねられたら、私はすぐに「否!」と答える。この20年間、同国のあらゆるサッカー関係者と話をしてきたが、誰もがリップサービス抜きで日本サッカーの実力を褒め称えてきた。そして、詳しい。Jリーグ経験者はもちろんのこと、元代表選手やサッカーファンの多くが1998年フランス大会(結果は1-0でクロアチアが勝利)、2006年ドイツ大会(0-0で引き分け)の記憶を辿っては日本の手強さを語り出す。