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「リツはそうしたプレーができなければ生き残れない」ドイツ名将の下で堂安律が急成長…W杯で信じ抜く「特別なものが自分に」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2022/11/23 17:15
カタールW杯を前にした取材に応じる堂安律。そのプレーでドイツに衝撃を与えてほしい
「監督じゃないですかね。一つの妥協も許さない監督なので。だから、9割はサッカーのことを考えているような生活になる。本当に素晴らしい監督で、僕としても、良い監督に出会えたなと思っています」
クリスティアン・シュトライヒ、57歳。2012年からフライブルクを率い、今季がすでに12シーズン目となる。どのクラブも「継続性が大事だ」と口にするが、フライブルクほど継続的にクラブを強化しているクラブは少ない。
堂安が言うように、妥協を許さない監督だ。コーチングゾーンでの振る舞いを見ていると、それがよくわかる。選手のポジションが少しでもずれると大きなジェスチャーで指示を飛ばし、サボろうものなら烈火のごとき怒声が聞こえてくる。
そうしたプレーができなければ彼は生き残れないだろう
以前、シュトライヒ監督に「堂安は守備の局面でも非常にインテンシティの高いプレーを見せていますね」と話を振ると、ニコリともせず「じゃないと(試合に出る)可能性はないからね」と、なんともストレートな答えが返ってきた。
厳格な指揮官は、こう言葉を続けた。
「我々のレベルでは、他の選択肢はない。そうしたプレーができなければ、彼はここでは生き残れないだろう。選手みんながチームにおける役割を担わないと、ブンデスリーガの試合で勝つことは難しくなる」
攻守におけるインテンシティの高いハードワークは絶対条件なのだ。
パワーを温存してプレーするのではなく、ハイパワーでプレーしながら終盤になってもキレを失わず、違いを生むプレーができるかどうか。そこが求められる。選手にとっては厳しいチャレンジだが、真摯に取り組み続けてきたからこそ、堂安は指揮官の信頼を得てレギュラーとして起用されている。
堂安「70分を過ぎても自分のプレーを出せるように」
実際、堂安本人も「最近は70分を過ぎても自分のプレーを出せるようになってきている」と、成長を実感しているようだ。
フライブルクは秩序だったチームプレーを大前提としているが、別に守備的なサッカーを目指しているわけではない。フライブルクの試合を観戦していると「シュピーレン!」というシュトライヒ監督の大声を耳にする。直訳すると「プレーする」。
そこに込められた思いが知りたくて、記者会見でダイレクトに聞いてみた。
「あなたにとって、『プレーする』とはどういうことでしょうか?」
シュトライヒ監督は、僕をじっと見て、しばらく考えた後で丁寧に答えてくれた。