オリンピックへの道BACK NUMBER
困った三浦に木原が小声でささやき…“りくりゅう”ペアが記者の前で見せた“現在の関係性”「人間的な性格、バランスがいいのかな」
posted2022/11/21 19:05
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
それは歴史を創り上げてきた2人の強さをあらためて知る時間であり、どこからその強さが生まれているのかを再確認する場でもあった。
11月19日、フィギュアスケートのNHK杯ペア・フリーが行われ、三浦璃来・木原龍一が優勝した。2人にとってのグランプリシリーズ初戦となったスケートカナダからの連勝でグランプリファイナル進出を決めた。
得点は216.16点で今シーズンの世界最高得点。2位のアメリカのペアは187・49点、30点近い大差をつけたことも突出した力を備えた2人の現在地を示している。
2010年代に入っても「最も弱い種目」だったペア
「隔世の感」と言ってしまってもいいかもしれない。活躍が目立つ男女シングルに対し、2010年代に入ってもペアは日本が最も弱い種目と言われてきた。
それを拭い去ったのが三浦と木原だった。昨シーズンの活躍は記憶に新しい。北京五輪では団体戦のショートプログラムで4位、フリーで2位のかつてない好成績をあげて日本の銅色以上(ワリエワのドーピング問題で順位はまだ確定していない)のメダル獲得に大きく寄与した。個人戦では7位となり日本初の入賞を果たし、世界選手権でも史上最高の銀メダルを獲得。世界のトップを狙えるペアにまで昇りつめた。
その足並みに緩みがないことを示したのが今回のNHK杯だった。
ショートプログラムはあの『You'll Never Walk Alone』
18日のショートプログラムは『You'll Never Walk Alone』。世界各地のクラブのサポーターに愛される、サッカーではなじみの深い曲でもある。
「レベルの取りこぼしがあったので気をつけていきたいと思います」
試合後、三浦が振り返るように、冒頭のツイストリフトでは最高で「4」のレベルのうち2にとどまった。それでも、他の要素はすべてレベル4をそろえた演技は圧巻と言ってよかった。高い技術に裏付けられた2人の調和に観客席の目は引き込まれた。得点は78.25点。目にした瞬間、三浦が目を見張った数字は今シーズンの最高得点であり、世界歴代5位の得点でもあった。
明くる19日のフリーは最終滑走。