オリンピックへの道BACK NUMBER
困った三浦に木原が小声でささやき…“りくりゅう”ペアが記者の前で見せた“現在の関係性”「人間的な性格、バランスがいいのかな」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/11/21 19:05
NHK杯を優勝し記者会見でマイクを持つ木原龍一(右)とその様子を見る三浦璃来。記者を前にした2人のやりとりから見えてくる2人の関係性とは…
フリーの演技後に見せたセーフポーズの意味
「小さいミスが多かったんですけど」と三浦は振り返る。
それでもショートとの合計では自己ベストを更新してみせた。
優勝を決定づけたフリーの演技のフィニッシュ直後、思いがけない光景が広がった。三浦がいわゆる「セーフ」のしぐさ、両手を広げる動きを一度したあと、再び手を動かす。目の前の木原龍一は膝に手を置き、笑顔でそれを見守る。拍手で称えていた観客席にも笑顔が広がった。
その動作の意味を三浦が明かした。
「1つ目は(曲の)時間内に終わることができて、『間に合った』というモーションで、そのあとはスロウルッツの後の小リフトで初めてミスをして、やばい、というモーションです」
ミスをしつつ明るく振る舞うその光景は、2人の間の信頼と、2人で築いた揺るがない土壌が示されているようだった。
三浦「つなぎってなんて言うんだっけ?」木原「トランジション」
2人の信頼は取材の場にも表れていた。
木原は三浦と結果を残せている理由について、こう答えている。
「1つめがスケーティングのタイプが似ていることです。一歩目の踏み出し、氷の滑りが似ていて、無理せずトップスピードに入れます。2つめはとにかく2人ともスピードが好きで、スピードがなければ怖いというくらいなので合うのかな、と。そして人間的な性格、バランスがいいのかなと思います。しっかり者と抜けているところを補うところが合っているのかなと思います」
三浦は自分を「しっかり者?」というように指さすと、木原は笑って違う、と否定する。
また、質問に対し、三浦が答えた場面でのこと。
「今回のフリーは昨年のフリーと比べて、つなぎ……ってなんて言うんだっけ?」
すかさず木原が小声で「トランジション」と教えると、三浦は言葉を続けた。
「トランジションをすごく増やしているので、私たちにとって難しいというか挑戦的で、まだ完璧ではないけどできることはやったかなと思います」
言葉だけでなく2人の築いた関係がそれらの光景に表れていた。