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「コーチの存在をありがたく感じます」宇野昌磨24歳が“完璧ではない”NHK杯の演技を「ベスト」と表現できた理由
posted2022/11/21 17:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
それは「再確認」できた意味の深い大会であり、そして真骨頂を発揮した場でもあった。
11月18日から行われたフィギュアスケートのNHK杯。男子シングルは宇野昌磨が優勝、昨年に続く連覇を果たした。
1年前は笑顔がしばしば見られていたが…
その表情は、昨年とは大きく異なっていた。試合の開始前から笑顔がしばしば見られ、終わったあとも笑顔だった2021年に対し、今大会はその始まりから表情は曇りがちだった。
『Gravity』で臨んだショートプログラムではジャンプにミスが出て、首位・山本草太に次ぐ2位で1日目を終えた。
迎えたフリーは『G線上のアリア』。
冒頭の4回転ループをきれいに決めると続く4回転サルコウも成功する。
3つ目のジャンプ、4回転フリップは2回転にとどまったがその後のジャンプを次々と決めていく。後半、予定していたトリプルアクセルからのコンビネーションジャンプは単独ジャンプとなったが、終わってみればGOEではマイナスが1つもつかなかった。得点は188.10点。フリーではトップ、合計では279.76点、逆転で優勝を飾った。
今日の試合はベストだったかなと思います
そのフリーについて宇野はこう語る。
「今日の試合はベストだったかなと思います」
本来目指しているところからすれば完璧ではなくとも「ベスト」と言えたのは、大会までの過程に理由があった。
ショートプログラム前日の公式練習で、宇野の表情は曇っているかのようだった。
「いらいらとしていました」
宇野自身も心境をそう明かしている。