核心にシュートを!BACK NUMBER
「僕は22歳でアルテタ監督に出会って驚いた」冨安健洋が後輩に教えた、アーセナルの“超最先端な練習法”「日本では教わらなかったこと」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byStuart MacFarlane/Getty Images
posted2022/11/23 11:25
冨安健洋はアーセナルで最先端サッカーをリアルタイムで会得している
「『それを論理的に説明してくれるから、サッカーの構図がどうなっているのかがわかるようになってきた』という話でした。そして、そういう指導を受けているからなのか、冨安自身考えも論理的になったし、サッカーに関する言語化も以前より上手くなっているなと感じましたね」
選手にも、アビスパで育成にかかわるスタッフにも発見とヒントを与えてきたことからもわかるように、冨安が出したアイデアは好評を博したものがほとんどだった。
「この練習はどうしてもやらせてもらえませんか?」
しかし、冨安側とアビスパの指導者たちとの間で、実は意見が分かれていたものがあった。それが、「シャドートレーニング」と言われるメニューをやるべきか、否かについてだ。
これは相手選手を置かない状況で、ピッチ上でGKからビルドアップして、最終的にシュートまで持っていくメニューだ。プロレベルでは当たり前にやるものだが、今回の対象である15歳前後の練習では、あまり行なっていないものだった。
その理由はいくつかある。
まず、この年代では長い距離のパスを蹴れない選手、パスの精度自体が低い選手がいるから。さらに、GKから始まる攻撃でどのようなポジションを取り、複数選手がどう絡んで、効果的にシュートまで持って行けるのか。これを明確にイメージするのが、対象年代の選手だと“まだ早い”と日本では考えられていたからだ。
育成担当のスタッフたちからそうした背景を説明された際にも、冨安は謙虚に、しっかりと耳を傾けていた。もちろん、アビスパで働く指導者や育成のプロたちをリスペクトする姿勢も見せていた。
それでもなお、冨安はこう訴えかけた。
「この練習はどうしてもやらせてもらえませんか?」
アルテタ監督に出会ったことによって変わった意識
どうして、そこまでこだわったのか。その理由を冨安はこう説明したという。
「僕は22歳でアーセナルに入って、『選手の立ち位置が改善されることでサッカーの質がこれだけ上がるのか』と感じました。そして、GKからのビルドアップのクオリティが上がれば、驚くほど簡単に良いシュートにつなげられるのだということも知りました。
もし、僕が15歳のときにその考えを知っていたら、20歳のときにはもっと高いレベルでサッカーをやれていたと思います。もちろんこの年代の子たちにやってもらう場合、プロの選手がやるときほど、効果的な練習になる可能性が低いというのはわかります。ただ、戦術的な考えや理論を学べるような練習を、日本の子たちがもう少し若いときから学べれば、将来の成長につながると感じる。だからこそ、このメニューを取り入れたいのです」
壱岐は冨安と話すなかで、彼が感じてきた課題を明かしてくれたこともあったという。