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吉田麻也34歳の“肉体改造”を支えて10年目・日本人トレーナーの秘技は“手じゃなく足で施術”…「彼はそうやって欧州で生き残った」 

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田嶋コウスケ

田嶋コウスケKosuke Tajima

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/11/20 11:00

吉田麻也34歳の“肉体改造”を支えて10年目・日本人トレーナーの秘技は“手じゃなく足で施術”…「彼はそうやって欧州で生き残った」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

日本代表の最終ラインを長年支えてきた吉田麻也。彼の肉体を支え続ける日本人トレーナー木谷氏に話を聞いた

 木谷は1回のセッションで60~90分の時間をかけて、体全体を見ながら全身のバランスを取っていく。試合前に行えば体はよりスムーズに動くようになり、試合後に行えば疲労の早期回復につながるという。試合前後のケアのほかにも、軽度のケガや痛みを抱えていれば、回復を早めるための処置を施す。

 こうした吉田のケアを、木谷は約10年にわたって続けてきた。吉田が「木谷さんには欧州のトレーナーにはない、良いところがたくさんあるので日本から来てもらった」と全幅の信頼を寄せるように、ここまで二人三脚で歩んできた。

力強さをつけながら、しなやかさを落とさない

 イングランド、イタリア、ドイツと、3つの欧州サッカー大国で挑戦を続けている吉田の体を、木谷はつぶさに見てきた。

 その中で大きな変化を必要としたのは、プレミアリーグの戦いだったという。2012年のサウサンプトン入団時、吉田の体は今よりも細かったが、当たりの激しいプレミアリーグを戦い抜くため肉体改造に着手したのだ。その結果、体重は入団時に比べて7~8キロ増加。体は「プレミア仕様」へ仕上り、CBとしてたくましさが増した。

 木谷は、その肉体改造にも深く関わった。2人が最も重視したのは「動ける筋肉」をつけること。筋量を増やしていけば、体は強くなり体重も重くなっていくが、俊敏性が落ちてしまえば元も子もない。サッカーに適した「動ける筋肉」をつけていくことに狙いを定めたという。木谷は明かす。

「プレミアのCBに必要な力強さを付けながら、クイックネスとしなやかさを落とさない。そんな筋肉を目指しました。体を大きくするのに筋トレを行なっていきますが、その過程でどうしても体が硬くなる疲労物質が出てくる。それを私の施術で除去していく。除去しながら筋トレを続けていくと、我々の目指す“動ける筋肉”がついてくるのです。

 急激に体重を増やすのは良くないので、ある程度、時間をかけて行ないました。サッカーで肉体改造を行なうには様々な方法がありますが、私達が取った方法は筋トレと施術の合せ技でした」

「麻也の一番素晴らしいところは…」

 もちろん取り入れたのは、それだけでない。日々の食事や栄養、睡眠、水分補給、サプリメント、プロテイン。吉田は、考えられることのすべてに気を使い、そして良いものを積極的に取り入れた。

 その結果、プレミア戦士たちと互角に渡り合える体を手に入れた。

【次ページ】 東京五輪前の“1日3セッション”秘話

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