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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
吉田麻也34歳の“肉体改造”を支えて10年目・日本人トレーナーの秘技は“手じゃなく足で施術”…「彼はそうやって欧州で生き残った」
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/11/20 11:00
日本代表の最終ラインを長年支えてきた吉田麻也。彼の肉体を支え続ける日本人トレーナー木谷氏に話を聞いた
成果は、吉田の戦歴が物語る。世界最高峰プレミアで日本人最長となる7シーズン半にわたって在籍し、こちらも日本人最多の公式戦194試合に出場した。プレミアリーグの所属クラブから契約更新を勝ち取った日本人選手は、いまだに吉田しかいないのだ。
欧州で日本人CBのパイオニアとして道を切り開いてきたその吉田を、木谷は「努力の人」と表現する。
「麻也は、体に良いと言われることをずっと一通りやっています。栄養補給や休養、サプリメントまですべてに気を使っているし、その知識も深い。岡崎慎司選手のパーソナルコーチを務める杉本龍勇氏の指導の下、走り方の改善に努めたのもその1つです。
また麻也の一番素晴らしいところは、試合に出られなくなっても常に準備を万全に整えていることです。試合に出ないようになると、”今日は施術いいかな”と思うようになってしまうもの。でも、麻也は違います。いつも準備を完璧に整えている。彼はそうやって欧州で生き残ってきた選手なのです」
東京五輪前の“1日3セッション”秘話
2人には忘れ難い思い出がある。
約1年半前に行われた東京五輪。大会前の短いオフを利用し、2人は日本国内で合宿を張った。吉田は当時在籍していたイタリアから帰国しており、それに合わせて木谷も生活拠点である英国から日本に戻った。コロナの感染予防ガイドラインを遵守しながら、マンションの一室を借りて共同生活を始めたのである。
コロナの影響で超過密日程となったイタリアでフルシーズンを終えた吉田の体は、悲鳴を上げていたという。まさに疲労困憊だったと、木谷は明かす。
「シンプルに疲労の蓄積が原因でした。コンディションは良くなかったです。筋肉にも問題があったし、あとアライメント(体全体の関節や骨の並びのこと)もちょっとおかしかったですね。普段なら3日間通してやれば体が戻ってきますが、あのときはなかなか戻らなかった。施術を集中的に1日3セッションして、彼の自主練にも参加しました。ずっと一緒にいましたね。そして、東京五輪前にようやく仕上がって。本番前には本当に良くなりました」
オフを終えた吉田は、東京五輪の日本代表チームに合流。DFの要として、そしてチームを束ねる主将として、準決勝進出に大きく貢献したのだった。
麻也のいるときに壁を打ち破ってほしい
そして今、2人が見据えているのが11月20日に開幕するカタールW杯である。木谷は「これまで麻也は新しい歴史を常に作ってきた。今回のW杯は麻也にとって目標のひとつだったし、私にとっても夢でした。日本代表はベスト8進出を目指していますが、麻也のいるときにその壁を打ち破ってほしい」と目を細める。
10年に渡って一緒に歩みを続けてきた吉田と木谷。これまでそうだったように、今回も誰も届かなかった領域に足を踏み入れようと、2人はいっそう気持ちを高めている。
第2回では、そんな木谷氏が“W杯に出場する各国プレミアリーグ所属の選手たち”からも信頼を集めてきた経緯についてご紹介する――。
<#2につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。